パワハラ体質の中にも“できる”人間がいるからややこしい
個人的な昔話でお許しいただきたいが、私が編集長時代、部下のヘマに激怒した某次長が、「お前のような息子を生んだ親の顔が見たい。すぐにここから親に電話しろ!」と迫ったことがあった。
私が見かねて、「そこまでにしておけ」と注意して、その場は収まったが、今なら、警察に通報されたかもしれない。
もっとさかのぼると、私が週刊誌の現場時代。その後社を離れて夕刊紙を創刊する名編集長だったが、彼は編集会議で、部下の出した企画がつまらないと、灰皿をその人間に向けて投げつけたことがあった。幸い、灰皿は逸れて壁にあたって落ちた。その後、何事もなかったかのように編集会議は続けられた。
パワハラ研究家の津野香奈美神奈川県立保健福祉大学大学院教授は、朝日新聞(9月13日付)の「耕論」で、
「あらゆる組織にとって重要なのは、共感性の欠如や強い支配欲、人を苦しめることを好む嗜虐性など邪悪な性格特性を持つ人に決してパワーを与えないことです。パワーを手にしてもパワハラしない人はたくさんいます。『地位が人を作る』からパワハラをするのではなく、そういう人がパワーを持つからいけないのです」
といっている。反論するわけではないが、そうしたパワハラ体質の人間の中に“できる”人間がいることも事実ではないのか。まったくパワハラのない職場や組織は理想だが、活気の乏しいものになりはしないか。
職員が不公平になるから家族3人で消費した?
お次は、視察先でおねだりしたものを独り占めしたことを“意地汚い”と批判されていることについて見てみたい。知事が視察先の特産物や、中にはゴルフクラブまでおねだりするというのは、たしかにみっともいいものではない。
しかも、もらった特産品などを職員たちに分けるのではなく独り占めしていたというのでは、批判されても致し方ないが、斎藤知事にはそれなりのいい分があるようである。
「斎藤氏は職員と分け合った場合、『なぜ(秘書課など)特定の課の職員のみ食べられるのかという問題がある』と不公平感について言及。(中略)自身がすべて消費する方針を秘書課に伝え『ルールというか、明確化した』と述べた」(産経新聞 9月6 日 18:46)
山ほどもらった名産の果物やカニなどを、斎藤知事と妻と子供だけで“消費”するのは(3人家族だと報じられている)さぞ、きつかったのではないか。
こう見てくると、斎藤知事の言動やマスコミ対応がたしかに、「県政を混乱させている」ことは間違いないが、内部通報制度に限れば、片山副知事の責任が大きいのではないだろうか。
少なくとも、自ら辞任したり、百条委員会で証言したりしたからといって、片山副知事への追及を疎かにしてはならないはずである。それとともに斎藤知事の関与がどこまであったのかを徹底的に追及すべきこと、いうまでもない。