顧客候補へのヒアリングで回答の信頼度を格段に上がる声かけ

顧客候補

顧客について最も詳しいのは顧客自身である。

既に顧客にプレゼンできるアイデアがあるならば顧客となり得る人物にアポイントメントを取り、フィードバックを得るとよい。この際に注意するべきは反応に対する解釈である。

「いいですね、この課題には本当に困っていて、発売されたら買いますよ」という反応をそのまま受け取ってはならない。

やや憚れるかもしれないが、以下のように質問してみよう。

●課題に対して本当に困っているということは、その解決に向けてなんらかの取り組みを行っており、それに対して時間を使ったり対価を払ったりしているか(支払い意思の確認)

●なんらかの取り組みをしていたり、サービスを買ったりしている場合はどのような検討プロセスを経てそれにしたのか(情報チャネル、購買決定要因の把握)

この質問をすることで回答の信頼度は格段に上がる。そうでなければ「痩せたいと思っている(何もしていないが)」「英語を上達させたいと思っている(何もしていないが)」という回答を「ニーズがある」と解釈してしまうことになりかねない。

筆者もこの場面には非常によく出くわす。顧客の反応をどう解釈するかは、文字にはしづらい非常に感覚的なものである。事業リーダー自身が顧客との対話を通じて感じ取る必要がある。

抽象的な表現にはなるが、対話を繰り返す中で顧客の感情と共感できるようになりなんらかのアイデアを考えた際にも「あの人はこういった反応を示すだろうな」と頭の中でシミュレーションできる。

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人間や法人が新しいものを買い、日常に溶け込ませるには強い理由が必要だ。「自分自身が最近3カ月で購入し、習慣として定着したものは何か。なぜそれを購入したのか」と考えてみよう。どの程度の動機が必要かの感覚を理解できるだろう。

デスクトップリサーチを行う

デスクトップリサーチは書籍・文献・webで簡単に仕入れることができる情報を用いた調査方法である。ここで重要なのはデスクトップリサーチは簡単で時間を取らないことに意義がある、ということだ。

対象領域の調査でデスクトップリサーチを行う時間の目安は、長くて1週間と捉えている。なぜならデスクトップリサーチで得られる情報量は多いが、インサイトを得るには至らない表面的な情報が多いからである。

デスクトップリサーチを3カ月継続したとしても、事業リーダーが高い情熱を持つに至るインサイトに巡り合うことは難しい。これにはそもそも人間は文章・資料だけでは心を揺さぶられないという感情的な理由もあるだろう。

事業立ち上げの必須要素に事業リーダーの熱意がある。他人が作成した資料から得られる情報だけでは長期間持続する熱意は形成しづらい。だからこそ事業リーダーが積極的に顧客と話すというプロセスは、情報取得の面のみならず、感情面からも必須といえる。

ただし、これはリサーチを疎かにしてもいい、ということではない。実業家らは驚くほど自社が置かれた市場の状況を把握している。実業家らはそれぞれのリサーチに加え、市場内で既に事業を行っているため、実務を通じても多くの情報を入手できる立場にあるのだ。