子ども増えすぎて小学校が対応しきれていない

ところが、取材を進めると、人口増加のしわ寄せとも言える事態が起きていることも見えてきた。その異変の一つが、地域の学校現場だ。マンションの建設が相次いでいるさいたま市の中でも、タワーマンションの建設が続いているエリアの一つがさいたま市南区である。

JRの武蔵野線と埼京線が交差する武蔵浦和駅周辺の市街地再開発事業では、これまでに6街区で開発が完了し、8棟のタワーマンションが建設され、主に住宅として活用されている。

さらに、現在、市街地再開発準備組合を立ち上げて事業の実施に向けた検討を進めているエリアもあり、こちらも現状の計画では、住宅用のタワーマンションとなる方向で調整が進められていて、今後もタワーマンションの建設が続く地域だと言える。都心へのアクセスの良さなどから、子育て世帯が増加しているのだ。駅周辺には、5つの小学校と4つの中学校がある。

武蔵浦和駅周辺地区における学級数の推計[出所=『人口減少時代の再開発』(NHK出版新書)]

このうち、小学校は12から24クラスの適正規模校が1校、25から30クラスの大規模校が3校、さらにそれを上回る過大規模校が1校となっていて、中学校も1校が大規模校に位置付けられている。

さいたま市の推計では、今後もクラスを増やして対応しなければならないことが見込まれていて、子どもの増加への対応が急務となっている。

児童数と校庭の広さが見合っていない

このうちの一つの学校が、さいたま市立浦和別所小学校だ。

児童数は1200人ほど。クラスの数は40に上っていて、国からは大規模校をさらに上回る過大規模校と位置付けられ、国の指標では抜本的な対策が求められる基準を大幅に超えている。

また、この学校の児童一人あたりの校庭の面積は4.5平方メートルと、市内の小学校平均の16.6平方メートルのおよそ4分の1となっていて、子どもたちの活動にも制約が出ることもあるという。

昼休みにのぞいてみると、校庭で遊ぶことができない子どもたちが教室に残っていた。取材で訪問したこの日に校庭で遊べるのは、2年生と5年生。それ以外の4学年は、教室や図書室などで昼休みを過ごしていた。

校庭で遊んだ後の5年生の男の子に話を聞いてみると、「今日はみんなでだるまさんが転んだをしていました。ボールで遊ぶのが本当に楽しい。日によるんですけど、ドッジボールとかバスケットボールとかたまにやります」と額に汗を浮かべながら答えてくれた。

一方で、校庭で遊べず、教室で友人とじゃんけんなどをしていた4年生の男の子は、「外で遊べないから、中で遊んでます。(外で)遊びたいです。走り回りたい」とのこと。