般若心経を唱え不安をかき消す
「行」は、お寺でなくてもできる。営業、製造、事務……それぞれの職場であなたの智慧を、「身・口・意」、つまり体と言葉と心をフル回転させて仕事に取り組むことで燃やし尽くすと、必ず何かが掴みとれるはず。そして、そんな姿を目の当たりにした同僚たちは、あなたが亡くなった後も、「こういうとき、あの人はこうしていたな」と心のなかに生かし続けるのだ。
余命宣告を受けた方が私のところに来られると、ほとんどの人が死を受け入れる準備ができたと話す。智慧を燃やし尽くすために使った「身・口・意」を、今度は死を受容する方法として使う決意をしているからなのだ。
「身」とは身を置く環境、つまり職場や家族の身辺整理。「口」とは表現を大事にすることである。とくに「ありがとう」を周囲の人にたくさん言うと、状況だけでなく気持ちも変わる。そして「意」は死への心の準備である。
働き盛りの人は未来を信じて生きているので、死に直面すると、どうしても我を忘れ心を見失いがちになる。そんなときには「般若心経」を声に出して、朝晩唱えることをお勧めしたい。次第に不安が消えていくことが実感できるはずだ。
いたずらにあれこれ考えず、身・口・意をうまく活用すれば、残された日々を生かす智慧が生まれてくるだろう。
池口恵観
1936年、鹿児島県生まれ。89年、前人未到の「百万枚護摩行」を成就。山口大学から医学博士号を授与。