老後に困らないベストな選択肢はなにか。各分野のプロフェッショナルに「より賢い選択肢」を聞いた。第8回は「がんvs.ボケで老衰 コストと負担はどれだけ違うか?」――。(全11回)
※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです
ゴールの見えない「延命治療」
がんでも認知症でも、まず家族にとって考えてほしいのが「平穏死」という視点です。平穏死とは「自然に任せる穏やかな最期」を意味します。残念ながら多くの病院では、平穏死は難しいのが現状です。治せる病気であれば、いい病院で高水準の医療を受けたほうがよい場合もありますが、高齢者の場合、現実的には極めて少ない。末期の病気など「治らない病気」が多いからです。無理に入院させたばっかりに、親を寝たきりにさせて、認知機能を奪ってしまうというケースを多く見ました。しかもそれがゴールの見えない「延命治療」の序章となっているのです。
そこで鍵となるのが「在宅療養(在宅医療と在宅介護)」です。病院では終末期になっても「延命治療」ばかりに力が入れられますが、自宅で「緩和医療」をしっかり受ければ、親自身の苦痛も軽減されます。さらに、在宅療養のほうが病院などに入院するよりもはるかに経済的という面もあります(図参照)。