老後に困らないベストな選択肢はなにか。各分野のプロフェッショナルに「より賢い選択肢」を聞いた。第6回は「子への生前贈与vs.孫への生前贈与 賢い節税法は?」――。(全11回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです

サッカー留学は非課税

2013年4月にはじまった「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」(以下、教育資金の非課税特例)。30歳未満の子どもや孫に教育資金として1500万円まで一括贈与しても、贈与税が非課税になる制度として注目を集めました。

写真=iStock.com/szefei

しかし、実際にこの制度が使われるケースは稀です。

というのも、そもそも親が子どもの教育費を支払っても贈与税はかかりません。祖父母が孫の分を支払う場合も同様です。たとえば、子や孫が「将来サッカー選手になりたいから、海外留学したい」と言い出したとします。このとき、親や祖父母が渡航費や宿泊費を含めた現地での生活費、ユニホーム代などを支払ってもすべて非課税。ところが、教育資金の非課税特例では、これらは教育資金の用途として認められません。一般的な贈与のほうが非課税枠は広く、使いやすいのです。

一方で「その都度渡すのではなく、一括で贈与したい」となると事情が変わります。たとえば「将来、孫の教育費に充ててほしい」と子どもに1000万円渡すと、教育費ではなく、現金の贈与とみなされ、贈与税の対象になります。これは孫に「将来使うように」と渡した場合も同様です。

この場合、教育資金の非課税特例を利用すれば、1500万円(習い事など、学校以外の用途の場合は上限500万円)までは非課税での一括贈与が可能です。ただし、贈与された資金のうち、使いきれなかった部分については贈与税がかかるので注意が必要です。