斎藤知事の肝煎り施策「4割出勤」
2月県議会には、斎藤知事が県民のために譲らなかった県政課題として、「4割出勤」が登場していた。
「全国初、兵庫県庁の挑戦」というキャッチフレーズを掲げ、斎藤知事は肝煎り事業を何としても実現させたいようだ。
「4割出勤」は、井戸敏三前知事(78)時代から課題となっていた、県庁舎の老朽化問題に端を発する。
7月26日公開の記事(兵庫県「おねだり知事」を今辞めさせてはいけない…「川勝知事の電撃辞任」を見てきた私が最も危惧していること)で紹介したように、亡くなった元西播磨県民局長の告発文書には、斎藤知事が「井戸(敏三前知事)嫌い」と一方的に書かれていた。
今回のゴタゴタの深層には、5期20年を務めた井戸前知事との軋轢があったことは確かである。
“井戸嫌い”の斎藤知事は1期目後半に入り、井戸前県政の目玉事業であった「老朽化に伴う県庁舎の建て替え、新設」を取り止めてしまった。「4割出勤」はその中で生まれた。
兵庫県の3つある庁舎のうち、耐震性不足が判明した1、2号館は、阪神淡路大震災クラスの直下型地震が起きた場合、崩壊の恐れがあった。
井戸前知事は、現在の県の敷地を活用して、新庁舎を建設する計画を立てていた。
職員のテレワークを推奨
ところが、井戸前知事にかわって就任した斎藤知事は昨年3月、コロナ禍でのテレワークの広まりやデジタル化の推進を踏まえ、1、2号館の解体は維持したまま、新庁舎建設を白紙に戻した。
斎藤知事は「もとの計画は約700億円の事業費だった。現在の物価高騰を試算すると1000億円を超える。新庁舎建設は県民の理解が得られない」と、井戸知事の新庁舎建設を撤回してしまった。
寝耳に水の県議会は強く反発したが、斎藤知事は聞く耳を持たなかった。
そこで、1、2号館の撤去・解体に伴い、新たに打ち出したのが「4割出勤」である。
1、2号館の撤去・解体で行き場を失う職員約2500人について、職員の出勤を週2日として、残りの3日を在宅勤務とすれば、職員の出勤率が4割程度となり、約1000人の出勤におさめることができる。
「4割出勤」の職員約1000人は3号館や生田庁舎などの既存施設に分散して働けばいいというのである。
コロナ禍の働き方改革で、在宅勤務やテレワークがふつうとなり、「4割出勤」であっても県庁の行政事務を十分にまかなえるというのが斎藤知事の考えだった。