現在、御花のホームページに掲載されている団体ツアー客向けの案内には「食事代と別途入園料が必要となります。入園料はご見学の有無にかかわらず、必須となります」と書かれており、「必須」の部分は赤字で目立たせている。
「日帰り客=9割」から抜け出すために
コロナ禍のピンチによって足元を見つめ直し、安売りから抜け出した御花。ここからは反転攻勢しかない。次なる目標は宿泊客を増やすことだ。日帰り客9割からの脱却である。現状の売り上げの内訳は、宿泊が1割、婚礼が3割、食事や売店などを含む観光が4.5割、宴会が1.5割。宿泊の比率を2.5割まで伸ばすと立花社長は意気込む。
そのためにはリピーターを増やすとともに、連泊したくなるような環境を整備する。現在、老朽化した宿泊棟をリニューアル中だ。これに合わせて御花はクラウドファンディングを実施。元々は庭園のライトアップに関わる資金援助を呼びかけたところ、目標300万円に対して1126万円以上と、想定を上回る寄付が集まった。そこで一部をリニューアル費用に回せるようになった。なお、寄付を募る際の謳い文句には「文化財が『負債』となるのではなく、後世に残る『宝』であり続けるため」とある。
宿泊客の増加は御花だけが潤うのではなく、柳川にも経済波及効果があると立花社長は力を込める。街中での食事や物品購入などの機会が増えるからだ。そして、御花が率先して値上げすることも街のためになるとする。
「私たちが高い料金を取れば、他の宿泊施設などは(競争の原理で)手頃な価格にすることもできます。でも、私たちが安売りしたら、他はもっと値段を下げなくてはいけないかもしれない。それだと柳川全体が貧しくなってしまいます」
立花社長は続ける。
「私たちは、『御花は高いね』と言われてもいいのです。この柳川を引っ張っていきたいと思っているから。全体の経済水準を高めることができれば、柳川の価値自体も上がっていくと思います」
大事にしてきた「立花宗茂の言葉」
ここで再び立花宗茂のエピソードに戻ろう。宗茂は次の言葉を残している。
「領民の幸せこそ、第一の義とせよ」
立花社長は幼少の頃からこの言葉を家訓のように大事にしてきた。
「父からは、自分が幸せになりたかったら、まず周りの人を幸せにしなさいと言われてきました。一人勝ちは駄目なのです。柳川の人たちに御花があってよかったと思われなかったら、会社としてやり続ける意味はない。そのことが常に頭にあります」
1587年に柳川に拠点を構えた宗茂は、一度は領地を取り上げられたものの、再び藩主となって最後まで領民に愛された。それから400年以上経った今、同じ土地で奮闘する子孫の姿をどんな表情で見守っていることだろうか。