「だめ」「しなさい」に代わる有効なテクニックとは

危険回避とまではいかなくても、言葉で子どもの行動を封じるときがありますよね。

たとえば、子どもが家でモノを投げようとしたときに、「投げちゃだめ!」と注意したり、食事中に好き嫌いから食べないものがあったときには、「ちゃんと食べなさい!」と命令口調で言ったりするような状況です。

そんなときに有効なテクニックが、「一度、承認を挟む」ことです。

たとえば、家の中で何かモノを投げようとしたとき「それ、投げちゃだめ!」と言うのではなく、「あっ、それ、投げるんだネ」と言ってみる。「ちゃんと食べなさい!」と責めるのではなく、「それ、食べないんだネ」と優しく言ってみるのです。

そう言われた子どもは、「今、自分は投げようとしている」「今、自分は食べないという選択をしている」と、自分の行動を認識します。

子どもは反射的に行動をし、「今、自分が何をしているか」を的確に認識できない瞬間があるので、「今何をしようとしているのか」を認識させるだけで、自分の行動を再考させることができます。

子供の行動を「承認」したほうがいい理由

親に見てもらいたくておかしなことをやり出す子どもに対しても、「親がその行動を認識してあげること」は、それだけで子どもを満足させる効果があります。たとえば、子どもが寒い日に薄着で出かけようとしたとき。

「コートを着て行きなさい!」
「着て行かない!」
「夜は寒くなるから着ていきなさい!」
「寒くないから大丈夫!」
「いいから着ていきなさい!」
「絶対イヤだ!」

などという会話になることありませんか。それをこんな言い方に変えるのです。

「今日はその格好で出かけるんだネ。コートは着ていかない感じ?」
「うん。これで行きたい」
「そうか、それで行きたいんだネ(承認)。どうして?」
「だって学校に行くとコートが邪魔だから」
「夜は寒くなりそうだけど、塾の帰りはその格好で大丈夫そう?」
「寒くなるの?」
「夜は冷えて風が冷たいって天気予報で言っていたよ」
「じゃあ、コートを着て行って、途中で暑くなったら脱ぐことにする」

このようにいつもうまくいくとは限りませんが、頭ごなしに命令するより、一度承認して会話を進めると、子どもが冷静になって自分で判断するきっかけになります。

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承認の言葉を使うときのコツは、きつい言い回しにならないように注意すること。「それ、食べないんだね」の最後の「ね」を心の中でカタカナにして、「それ食べないんだネ」と語りかけるつもりで、優しく言うように心がけてみてください。

少し専門的な話にはなりますが、こういった否定しない会話のつくり方を子どもが学ぶことで、親の働きかけに対して「いる」「いらない」といった選択を受動的にするようなコミュニケーションの方法を脱却することができます。

そして、親と子が対等な立場からコミュニケーションするような新しいコミュニケーション手法を子どもが体得する貴重な機会を提供することができます。