子どもが集中できる時間は「学年×5分」

――子どもが受験勉強に取り組む際に、親はどのようなことに注意したほうがいいでしょうか。

特に家庭内で子どもが勉強するときは、連続して長時間にわたって勉強させないほうがいいです。私はお子さんの受験勉強のことで悩む親御さんに対して「子供の集中力は『学年×5分』しか持ちません」と伝えています。これは科学的な実験結果に基づいて導き出された時間というわけではないのですが、大人が想像している以上に子どもが集中できる時間は短いという意味で必ず伝えるようにしています。

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大人でも「今日はどうしてもこれを終わらせなければいけない」といった差し迫った状況になれば別ですが、1時間も2時間も集中していられることはそうそうありませんよね。ですから「小学1年生なら5分集中できれば十分」と考えたほうがいいのです。

子どもは「学年×5分」しか集中できないと思っておけば、親御さんにも心のゆとりができます。たとえば、小学1年生の子が「5分間で漢字を3つ書く」と決めたとして、3分間で漢字を3個書けたとしたら「3分しか経っていないのに3つも書けたんだね」と言ってあげられて、子どものやる気や肯定感も高まります。

そうすると、うれしくなった子どもは「まだ時間があるから、漢字をあと2つ書こうかな」などと、勉強に自主的に取り組むかもしれません。逆に、5分で2つしか書けなかった場合でも「あと1分増やしてもう一つ書きたい」と言ってくる場合もあります。このように、時間内で調整してやるべきことを進める、あるいは間に合わなかった場合にはどの程度の時間が必要なのか、ということを考える能力も育てることができます。

短時間で集中力を高める訓練をすべき

――子どもが自ら勉強に興味を持ち、熱中することは問題ないんですね。

そうなんです。大事なのは、子どもの意思を尊重することです。勉強計画を立てることも「こころの脳」の発達を促しますから、限られた時間をどのような勉強に使うかも子どもに決めさせるようにします。

むしろ、最初から「あと2時間勉強しなさい」などと言われてしまったら、集中力が途中で切れてしまい、「早く2時間経たないかな」というように課された時間を消化するような勉強の仕方になってしまうおそれがあります。

一方で、「学年×5分」の考え方では、脳の処理速度は、限られた時間内で頭をフル回転させ情報を処理していくことで鍛えられるため、短い時間であっても集中する習慣をつけることができます。こうして脳の処理速度を上げておけば、時間制限がある入試においても力を発揮しやすくなります。