子どもの脳の発達は生活のなかで確認できる

――家庭内において、子どもの脳の発達を確かめるにはどうしたらいいでしょうか。

確かめ方のひとつとして、「夕食を食べ終わった後の食器を片づけずに放置しておく」というものがあります。夕食後の食器の片づけをお母さんが担当しているご家庭があったとして、お母さんがなかなか片づけようとしない日があったときに、「あれ? お母さん、何かあったのかな?」と異変に気づけるようであれば、前頭葉の働きである「こころの脳」は十分に育っています。

「汚れた食器がこのまま食卓に置いてあると、次のご飯のときに困る」などと、未来を予測できれば、前頭葉が発達していると言えるからです。ただ、多くの子どもは、皿洗いや洗濯といった家事のタスクは誰かがやらなければ終わらないということ自体に気づけないので、それらに気づかせる工夫が必要になります。

――まずは家事の流れを意識させることが大切なんですね。

親御さんがあえて先回りせずにいると、子どもに「予測を立てる機会」を与えることができます。

不登校になったお子さんがいるご家庭で、親御さんが「学校を休むのは構わないけど、あなたは家にいて時間もあるだろうから、食器洗いはやっておいてね」と言ったそうです。しかし、お子さんは当初、食器を全く洗いませんでした。

シンクには汚れた食器が溜まっていきましたが、親御さんはグッと我慢して洗わずにいたといいます。そして最後の一枚の食器も使い終えた後に、お子さんはようやく食器を洗い出したそうです。それ以降は、毎食後必ず食器を洗うようになったと聞いています。

息子に皿洗い方を教える
写真=iStock.com/ake1150sb
※写真はイメージです

脳がきちんと育っていれば、子どもは必要性を感じたことを自主的に行います。親御さん自身が世話を焼きたくなる気持ちもわかりますが、子どもの成長を見守るつもりで、待つことを意識していただきたいですね。

ぼうっとしている時間こそ創造力の源

――本書では、子どもがぼうっとできる時間をあえて与えたほうがいいというお話も紹介されていました。なぜ、子どもにとってぼうっとできる時間が必要なのでしょうか?

脳を効率的に働かせるには、脳を使わない時間にしっかりと休ませることが大切なんです。妄想中の脳の働きは、脳科学の専門用語で「DMN(Default Mode Network)」と呼ばれます。

このDMNの働きにより、「ひらめき」ともいえる人間特有の創造力が育つと考えられています。とくに9歳から11歳頃までの子どもにはぼうっとする機会をできるだけ多く与えることでDMNが発達しやすくなると言われています。