受験や試験の勉強だけでは、頭のいい子は育たない

さらに、「何かにハマる」経験を子どもが持つことは大切だと考えます。子どもが夢中になっていること、強い興味があることがあれば、大人の価値観からしたら役に立たないと感じてしまうことでも、否定せず、親としても興味を持って応援してみます。

例えば、私の子どもは一時期「ポケモン」にハマっていました。モンスターの名前やタイプ、変身した時の姿を細かく覚えるだけでなく、ポケモン図鑑にあるポケモンを一通り、何日もかけて熱心に白い紙に描き写すことに熱中していました。

大人の価値観からしたら「役に立たない」ことをしていると見えてしまうかもしれませんが、よく考えると、何かに自ら興味を持ち、情報を分類したり関連づけたりし、知識を深めるという作業は、何か系統的な学問を学ぶ際にとても大切なプロセスです。

彼がポケモンに対して行なっていた作業と、私が医者として無数にある病気の名前や治療法を覚える作業にはそれほど差はありません。そして、興味があることに没頭する経験、「頭を使うことは楽しい」という感覚は、その後の人生でも大きな財産になるでしょう。

撮影=プレジデントオンライン編集部
熱中できることと出会うことも子供にとっては大切だという。

――子どもの学習において、睡眠や運動の重要性についてはどのようにお考えですか。

睡眠と運動は、子どもの学習能力に大きな影響を与える重要な要素です。まず睡眠について、脳科学や心理学の研究から、記憶の定着には睡眠が決定的に重要な役割を果たすことが分かっています。

また、ある研究では、何かを記憶したあとに、比較的早く寝たほうが覚えたことを忘れにくいことが示されています。例えば、夜8時に勉強して3時間後に寝る場合のほうが、朝8時に勉強して15時間後に寝る場合よりも、記憶の定着が良いという結果があります。子どもが重要な内容を学んだ日は、しっかり就寝させるのが良いでしょう。

運動に関しては、有酸素運動が認知機能や記憶力の向上に効果があることがわかっています。学習の前に10~20分程度の運動をすることで、その後の学習効果が高まるという報告もあります。

したがって、子どもの生活リズムの中に適度な運動と十分な睡眠を組み込むことが、学習能力の向上につながると言えます。