例えば、「私は算数ができない」と思うのではなく、「私は算数ができるように自分の脳を鍛える」と考える。「ミスを犯してしまった」ではなく、「ミスは自分を成長させてくれる」と捉える。このような思考の転換を子どもに教えることで、学習に対する前向きな姿勢を育てることができるのです。

筆者提供
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「努力すれば成長できる」という信念を持たせる

――学習意欲を高めるために、親ができることはありますか。

はい、いくつかあります。まず重要なのは、子どもの自己効力感を高めることです。自己効力感とは、「自分にはこれができる」という感覚のことです。

これを高めるには、達成可能な小さな目標を設定し、成功体験を積み重ねていくことが効果的です。例えば、算数の問題を解く時に、最初は簡単な問題から始めて、徐々に難しくしていく。そして、子どもが問題を解決できたら、その努力と成長を褒めます。

結果だけでなく、そこに至るまでの過程を評価することで、子どもは「努力すれば成長できる」という信念を持つようになります。ある科目に対し、苦手意識を持ったり、自信を失ったりしている子どもがいるなら、一度分かるところまで戻って、また小さな成功体験を積み上げさせるべきだと思います。

撮影=プレジデントオンライン編集部
親の声かけで子供の意欲や才能は伸ばすことができるという。

――家庭での学習環境づくりについて、アドバイスはありますか。

家での読書や勉強を習慣化することは意識しています。ほぼ毎日、限られた時間であっても読書や勉強をする時間を設けて、淡々と継続してもらうようにしています。私の家ではホワイトボードに勉強することをリスト化して、一つ終わったらチェックボックスに子ども自身にチェックを書いてもらう、といったこともしています。こうしたリスト化とチェックの記入は私自身が医学生時代からやってきたことでもあります。

そして、何よりも親が勉強や読書に取り組む姿、学ぶことを楽しんでいる姿を見せることが大切だと思っています。妻も私も、家でよく本を読んだり、論文や教科書を開いて勉強したりしています。子どもはそんな親の姿を見ています。

実生活で直接的には全く役に立たないようなことでも何か面白いことを学んだら、できるだけ分かりやすく子どもに絵や図を描いて、知識を共有しています。「学ぶことは本質的に楽しい」、「学ぶことは人生において大切だ」、という価値観を親が持っていると、子どももそうした価値観を内面化するのではないでしょうか。勉強しない、本を読まない親に、「勉強しろ」「本を読め」と言われても子どもにとって全く説得力はないでしょう。