自分の目と頭で「悪評」の裏側を見る

アメリカの悪評高い代表企業として筆者が出会ったのは、アマゾンである。ティッカーコードは「AMZN」である。

川北英隆『個別株の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

今やアマゾンの名を知らない日本人はいないだろう。しかし10年以上前の日本はどうだったか。日本の同業他社が圧倒的に有名だった。

しかもアマゾンは赤字決算続きだった。知り合いにアマゾンの株はどうかと質問しても、「そんな株式を買うのは奇特だよ」程度の反応だった記憶がある。

とはいえ疑問だったのは、赤字続きの企業が生き延びるだけではなく、業容を急速に拡大していた事実である。そこでネットで業績の概要を調べた。

注目したのはキャッシュフロー収支(現金の収支)である。企業が倒産する原因としては、現金が不足し、資金繰りに行き詰まることが多い。アマゾンが赤字でも倒産しないのは、キャッシュフローが豊富に生み出されているからだろうと考えた。

具体的には、業容を拡張するための設備投資額が非常に大きく、その減価償却費が費用として多額に達しているのではないか。

費用が巨額だと決算は赤字になる。しかし減価償却費は現金の流出をともなわない。この関係を確認するためにはキャッシュフロー計算書が使える。

公表されているキャッシュフロー計算書を確認したところ、アマゾンの営業活動にともなうキャッシュフローは黒字だった。

先の図表1で示したように、株価はアップルと遜色なく上昇している。赤字決算続きなので、それを心配した投資家が株価を安値に放置していたこともあろう。

キーエンスにしろアマゾンにしろ、悪評を真に受けたのでは株式購入チャンスを逃す。株価の急落を「一大事だ」と即断し、他の投資家と歩調を合わせて株式を売ったのでは、完全に逆モーションである。もちろん世間の高い評価を鵜呑みにするのも良くない。

自分の目と頭でそれらの裏側を見なければならない。悪評や株価下落をデータで分析し、また高い評価の裏付けを取り、株式を買うかどうかを判断することが強く求められる。

※本書の内容は、特定の株式の推奨や投資勧誘を意図するものではありません。
最終的な投資の決定は、ご自身の判断と責任で行ってください。

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