4451円という過去最大の下げ幅を記録

8月初旬、主要国の株式市場は大きく下げた。日経平均株価は、一時4451円安という過去最大の下落幅を記録した。台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子など半導体関連銘柄の多い台湾、韓国の株式市場も大きく下げた。

終値下げ幅と円相場 東証、下げ幅史上最大
写真=共同通信社
大幅続落し、終値の下げ幅が4451円28銭となった日経平均株価を示すモニター。米株式相場の大暴落「ブラックマンデー」翌日の下げ幅を超えて史上最大となった=2024年8月5日午後、東京・東新橋

株価急落の理由の一つは、米国経済に景気後退の懸念が高まったことだ。失業率が上昇したこともあり、これまで世界経済を牽引してきた米国の先行きに黄色信号が灯り始めた。また、株式市場をリードしてきた、大手IT銘柄の先行きにも不安が出ている。

特に、米インテル株の下落は顕著だ。2日、同社株は前日比26.1%下落した。近年、同社はAI分野で設備投資を実行したが、4~6月期の業績は悪化した。

AI分野の設備投資を積み増す企業は増えたが、それに見合った収益を獲得することが難しそうだ。

売り圧力は好調だった日本株にも波及

さらに、7月末、予想外に日銀が利上げを実施した。円キャリートレードの巻き戻しで円高が進んだことや、資金調達通貨としての円金利が上昇したことは、投資家にとって重要なマイナス要因だ。

今後、AIなど先端分野で、設備投資の資金捻出に人員を削減する企業は増えるだろう。米国の労働市場は軟化気味に推移し、個人消費の下振れ懸念も増えると予想される。それは、米国および世界経済の成長率低下の要因になりうる。リスク回避に動く投資家は増え、当面、世界的に株式市場の変動性(ボラティリティー)は高まりやすくなるだろう。

7月の後半以降、世界の株式市場の環境は変化した。7月前半まで、日米をはじめ世界的に株価は上昇した。米国の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、物価の上昇の鈍化から利下げの可能性に言及した。それに伴い米金利は低下した。米国と比較してわが国の株価に相対的な割安感が出ていた。短期目線で日本株を買う海外投資家は増えた。

ところが、7月下旬、米国を中心に株価は調整しはじめた。売り圧力は日本株などにも波及した。一つのきっかけは、4~6月期の米国企業決算だ。決算でAI関連ビジネスの成長を期待する投資家は多かった。主力企業の決算が出始めると、予想を下回る結果に投資家は直面した。