株式市場で荒い値動きが続いている。日経平均株価の終値が過去最大の下げ幅を記録してから一週間、現在では3万5000円近辺で推移する乱高下の中で、個人投資家の心構えとは何か。エコノミストの崔真淑さんは「資産分散こそが、突発的なリスクに対して投資家が出来る最大の防御である」という――。
日経平均株価 東証続伸、3万6千円回復
写真=共同通信社
日経平均株価の終値を示すモニター=2024年8月13日午後、東京・東新橋

モヤっとする有識者たちの発言

8月上旬に日本だけでなく、アメリカや世界中で株価が乱高下しました。これを執筆している8月13日には、日経平均は3万6000円を回復しており、あの株価急落はなんだったんだ……という空気が流れつつあります。

しかし、日々の株価変動を見てみると乱高下を繰り返しており、プロの投資家もチェックしている「Financial times」や「The Economist」には、今後も株価乱高下が続く可能性があること、景気悪化に備えて株式ではなく債券を購入するプロ投資家が増えつつあることが報道されています。本稿では、株価が乱高下する中で、私たちはどのような備え、つまりどのような資産運用をすべきかについて考えていきます。

8月2日の株価下落の時に、ネット上では様々な有識者の「慌てないで! 焦って売らないで! 投資の基本は長期分散投資ですよ!」というフレーズが駆け巡りました。私は、この言葉を聞くたびに、モヤっとします。そして、この言葉は様々な誤解を生んでいると感じています。

2種類に分けられる分散投資

まず、分散投資は、問答無用でリスクを小さくするために必須でしょう。

資産運用におけるリスクという表現には、どうしても急落するようなイメージがつきまとうかと思います。しかし、リスクとは、将来のリターンがどの程度変動するかを示した言葉であり、リターンが上振れる嬉しいリスクもあれば、下振れるリスクも含まれます。

ファイナンス理論では、同じリターンを得るならば、受け入れるリスクを小さくしたいと考える投資家を仮定することがほとんどです。

たとえば、3%の投資リターンを得たいならば、「できるだけ価格変動が小さく、安定的に資産運用をしたいと考える人がほとんどだよね」ということであり、リスクを小さくするために分散投資が重要なのは、多くのファイナンス研究が詳らかに物語っています。

その分散投資には、大きく2種類が存在します。1つは、日経平均のような株価指数に連動するファンドに投資をすることで、株式投資における「銘柄分散=特定の個別株に一極集中で投資をするのではない投資」をする分散投資。もう1つは、株式・債券・コモディティ(石油、ガス、金、プラチナなど)・不動産・外貨……など異なる資産に投資をする「資産分散」です。