対応宣言は加害者への牽制以外にも効果あり

カスハラ被害が起こったとき、あるいは起こった後に、あなたの会社ではどんな対応をしていますか?

その場の対応では従業員が「ただ我慢した」が37.0%と最も多く、以下「反論、説得等を行った」が26.9%、「その場で上司に相談した」が26.1%、「とにかく謝罪した」が26.0%と続きます。

また、事後に従業員が行った対応は「社内の上司に相談した」が41.5%、「特に何もしなかった」が41.3%、「社内の同僚(先輩・後輩含む)に相談した」が25.4%です。

それに対し会社はどう動いてくれたか? 「被害を認知していたが、何も対応はなかった」が36.3%に上ったほか「被害を認知していなかった」も19.3%ありました。何らかの対応があった(26.0%)場合でも「被害者にヒアリングを行った」(44.5%)など事実関係の確認にとどまっているケースが多数でした。

つまり、カスハラが起きても対応は現場のパート・アルバイト任せで、事後報告を受けた上司や同僚も相談には乗るものの会社に報告していない。会社が報告を受けたケースでも、知見を生かした組織づくりなどの対策には至っていないのが現実のようなのです。

調査ではカスハラ被害後に、会社や上司から「ひたすら我慢することを強要された」「相手にしてもらえなかった」「一方的に自分の責任にされた」など、セカンド・ハラスメントを受けた人も25.5%いることがわかっています。これでは従業員が「またいつ被害に遭うかわからない」と不安になって辞めていくのは当然でしょう。

大切なのは「信頼資産」と「心の負債」のバランスです。悲しいかな現実にカスハラはある(心の負債)、けれどもいざそれが起こったときに上司や仲間が支えてくれ、会社がしっかり対応しフォローまでしてくれるという安心感(信頼資産)があれば、離職は防ぐことができます。

事実、信頼資産が高い職場に勤める従業員は、カスハラ被害を受けた後の心境でも「仕事を辞めたいと思った」人が信頼資産が低い職場に勤める従業員に比べ半減し、「心身に不調をきたした」「次の転職時は顧客やり取りのない仕事につきたいと思った」人も明らかに低減する傾向が確認できています。