よく寝ている国は生産性が高くてリッチ
――社会全体への影響については何かわかっていることはありますか?
世界経済フォーラムが調査した結果、平均睡眠時間が長い国ほど、国民一人あたりのGDP(国内総生産)が高いことがわかったんですね。生産性が高く、リッチな国ほど良く眠っている傾向にある。
ヨーロッパ諸国が上位にある。その真逆に位置しているのが日本です。睡眠時間が最下位。欧米の平均と1時間の差がある。1時間というのはかなり深刻ですね。睡眠を削って働いているけど、いや、おそらくそのせいで、生産性が低いということですから。いろいろな調査で常に睡眠時間が一番下なのが日本なんです。
昭和時代の日本人は今よりずっと寝ていた
――朝早くから深夜まで働く「昭和の働き方」を引きずって、睡眠が少ない状態なのでしょうか。
実はおもしろいデータがあって、「NHK国民生活時間調査」によると、1960年代の高度経済成長が始まった時期は、今より1時間多い、8時間13分も眠っていたんですね。夜10時までに就寝する人が67%もいた。
バブルが弾け、失われた30年間に睡眠時間はどんどんと短くなっていく。夜10時までに寝る人が30%を割った。日本人の睡眠は、深刻化していく。なぜこうなったかはわからないですね。文化的背景なのか。
日本語で「お疲れさま」という表現があるじゃないですか。先進国でそういう表現を使うところは日本だけなんじゃないかな。英語では訳せない。「お疲れさま」ということは、疲れるまで働いてくれてありがとうでしょ。欧米の感覚では、疲れるまで働いちゃいけない。逆の発想ですよ。
――ざっくり言えば、現在は日本全体が寝不足状態ということですか。
昼食や給食後に眠いのは当たり前と思っている日本人は多いですよね。国際標準では、昼間に眠いのは、体調不良の兆候って見なされる。
自覚症状が出ない、あからさまに眠気の出ない人もたくさんいる。慢性的な眠気に慣れているのかもしれませんね。こういうものだと思っている。