徹夜明けの脳は酒に酔っ払った状態
病気になりやすくなるだけでなくて、4時間睡眠を5日間、あるいは6時間睡眠を10日間ぐらい続けると、完徹と同レベルに脳のパフォーマンスが低下する。
徹夜明けの脳のパフォーマンスは、酩酊状態と一緒なんです。アルコール血中濃度0.1%相当で、ほとんど酔っぱらった状態ですね。つまり、徹夜の次の日は脳の認知機能が低下して、本来のパフォーマンスが発揮できないことがわかっている。
パフォーマンスを改善しようと思うなら、食事や運動も大切ですが、何より睡眠を最初に手をつけるべきですね。
――睡眠不足や徹夜明けは、確かに集中力や思考力の低下を体感します。
それだけでなく、最も重要なのは、睡眠を取った時に、クリエイティビティの源泉となるような洞察力が上がることがわかっているんです。洞察力とは、それまでいろいろ経験してきたことの中から「あ、これは実はこうだったんだ」という新しい洞察、いわゆる、「ひらめき」です。睡眠を取ると、このひらめきが起こるんですね。
また、睡眠中に脳内で記憶の整理が起こるので、睡眠不足だと記憶力にも影響が出る。
広い意味で脳のパフォーマンスは睡眠を必要としているわけなんです。それから、感情のコントロールができなくなることも指摘されていますね。
性格が悪くなり、人間関係もおかしくなる
――感情のコントロールができなくなるとはどういったことでしょうか。
イライラ、くよくよするとか、アンガーマネジメント力、怒りのコントロール力が低下しますね。
ある研究結果では、利他的行為が抑制されるということも指摘されているんです。つまり、人間性に支障をきたすわけです。端的に言えば、性格が悪くなる。人間関係もおかしくなる。
――そうなると会社ばかりか、社会全体に深刻な影響が出ますね。
会社への睡眠の影響については、慶應大学商学部・山本勲教授の研究(「従業員の睡眠と企業の関係性」、正社員約1万人・上場会社700社対象)で、従業員が良く眠っている企業は、利益率が高いことがわかっている。業績が良いから従業員が良く眠っているわけでなくて、彼らが良く眠っているから業績が良い。
利益の高い企業ほど、睡眠時間が短いと一般的に考えられているが、実際のデータは違う。要するに、「眠らないとダメ」っていうことなんですよ。