暑さ指数31℃以上は原則、運動禁止

――暑さ指数は、どのように見るといいでしょうか?

暑さ指数の温度に応じた熱中症予防指針が示されているので、それを参考にしていただきたいと思います。暑さ指数31℃を超えると「危険」で、高齢者はなるべく外出を避けて屋内の涼しいところで過ごし、運動は原則禁止としています。

出典=日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)より
日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)を編集部で改編

7月、8月は、暑さ指数31℃を超える日が多いため、2020年より一段高い基準を設けて注意喚起を行うようになりました。それが、各県の観測所で暑さ指数33℃以上になると予測された場合に発令する「熱中症警戒アラート」です。

危険な中で敢行されているスポーツイベント

――「熱中症警戒アラート」が発令されたら、どのような行動をとるといいのでしょうか。

暑さ指数31℃の時と同様に、高齢者は外出を控え、それ以外の人も運動は原則禁止です。熱中症をひとごとと思わず、自己防衛するように呼び掛けています。

――8月はほぼ毎日のように「熱中症警戒アラート」が発令されているので、運動禁止といっても実際は難しいのではないでしょうか?

はい、昨年度でいうと、熱中症警戒アラートが47都道府県(※)で合計1232回発令されました。これだけ発令されていると日程を調整するのも難しいのだと思いますが、危険な暑さの中でスポーツイベントや工事などの屋外作業が敢行されています。

私は東京オリンピックで、選手の安全を守るための熱中症対策の取りまとめに関わりましたが、本音ではこんな暑い時期にやるなどありえないと思いました。高校野球も同じです。2部制を一部導入して、時間をずらすなどの試みをしてはいますが、危険であることに変わりはありません。

もちろん彼らはアスリートで体力もあるし、暑い中での運動にも慣れてはいるでしょう。人はしばらく暑い日が続くと、上手に汗をかけるようになり、暑さに慣れてきます(暑熱順化)。でも、暑さに慣れているはずの沖縄でも、運動や農作業など負荷かがかることを行うと搬送される人が出ています(図表6参照)。夏場の運動や屋外作業は、命の危険と隣り合わせだという認識を持つ必要があります。

グラフ=小野雅司氏提供

※広域にわたる北海道(8カ所)、沖縄(4カ所)、鹿児島(2カ所)は分割して発令。