空の混雑緩和の切り札「4次元の管制」とは

前項で述べた誘導のことを「レーダー誘導」と呼びます。じつは現在すでに、レーダー誘導を行なわない次のフェーズに入っています。それが「4次元の管制」です。

複数の機が同時に近づいて来るから、どれを先に降ろすかという“自由度”が生まれてしまうわけで、理想は、管制官がわざわざ指示しなくても、初めから適正な間隔で1列に並んでいる状態。そのままの流れで着陸に誘導することができる状態です。

つまり、管制官が指示をしないと一定の間隔がとれないような状態にしてしまうことは、その時点でもう「航空路管制の失敗」ともいえるわけです。

では、どうすればよいのか。そこで考えられるのは、各機が着陸する空港付近で自動的に適正な間隔で1列に並んでいる状態になるように、「もっと手前から、時間をさかのぼって時間管理すればいい」という考え方です。

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遅延も早着も起きない「完全管理」が実現する

駐機場から滑走路までの移動時間、離陸に要する時間、巡航中の各ポイントを通過する時刻、これをデジタルで詳細に計算し、その時刻に合わせてパイロットが速度調整をしていけば、到着時刻も正確に管理できるはずです。

そのうえで、各機が一定の間隔で到着するように滑走路の使用タイミングを割りふっていけば、もはや管制官が手を加えなければならないほど混雑することはありません。

パイロットは、出発準備が整ったら決められた時刻に離陸して、決められた地点を決められた時刻に通過することに集中する。気がついたら、滑走路の手前でちゃんと適正な間隔で並んでいる。それが「4次元の管制」なのです。

これまでの“3次元の管制”は、平面×高さの3次元のなかで位置を把握し、管制官が速度を指示して間隔を調整したり、場合によってはショートカットさせたり、ルートを変更させたりすることで位置関係を調整していました。

「4次元の管制」が実現すれば、もう、人間が状況を見て、そのつど判断することもなくなるはずです。ショートカットもなければ追い越しもない、離陸したら着陸するまで、決められた時間に決められた地点を通過するということを守るだけ。そうすれば遅延も起きないし、早着もしない、完全管理された航空交通が実現するでしょう。