植物をどう食べるか

ホモ・サピエンスの間で、先ほど述べた“集団脳”が発達していたことは、ここでも有利に働いたはずです。「植物をどう食べるか」という部分に、集団ならではの知恵が生かされる局面が多々あったと思われるからです。

植物は、有益な成分を多量に含んでいる一方、硬い食物繊維のために、消化されにくいという難点も抱えています。

一石英一郎『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)

草食動物である牛に胃が四つもあるのは、胃の中で消化酵素と生息する微生物の力を借りて「反芻」をしながら、食べたものをゆっくりと分解して、必要な栄養素をそこから無駄なくみ取る必要があるからです。

人類には胃がひとつしかないため、植物を生のままただ食べるだけでは、ほとんど消化できないまま排出されてしまいます。

しかし人類は、火を使うことを知っており、さまざまな器具を用いて食材を調理する術すべも知っていました。野菜も火を通せば、堅固な細胞壁が壊れ、セルロースなどの食物繊維が分断されて、消化しやすい状態で口に入れることができます。

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火を使う技術を植物に応用できたか

ネアンデルタール人も火を使っていましたが、彼らはそれを、おそらくもっぱら肉を調理することにのみ利用していたはずです。もちろん、肉を火で調理することにも、多くの利点があります。殺菌効果がある上に、火を通せば長期保存も可能になります。

消化しやすくしたり、タンパク質をアミノ酸に分解してうまみ成分に変えたりすることもできます。

ただ、その技術を植物に応用できたかどうかで、道は大きく分かれたのではないでしょうか。