ネアンデルタール人が生存競争に負けた理由

ネアンデルタール人がヨーロッパ大陸に現れたのは、諸説ありますが、およそ40万年ほど前だと考えられています。一方、ホモ・サピエンスは、遅くとも30万年前には、「緑のサハラ」と呼ばれる現在のモロッコ周辺に登場していました。

ネアンデルタール人はやがてヨーロッパ大陸から南下していきますが、彼らがいつ、どのようにしてホモ・サピエンスと遭遇し、どのように生存競争を繰り広げたのかについては、はっきりしていません。いずれにしても、彼らネアンデルタール人は私たちホモ・サピエンスとの戦いに敗れ、絶滅しました。ただしそれは、単純に彼らが私たちよりも「劣っていた」ということを意味するのではないようです。

彼らネアンデルタール人は、少なくとも知能の面では、現在の人類とほとんど差がありませんでした。脳の容積だけを比べれば、実は人類よりも大きかったことがわかっています。つまり彼らは、われわれよりむしろ賢かった可能性すらあるのです。

事実、彼らは言語で意思疎通を図り、火を使って調理していました。衣服を身につけ、それを装飾品で飾る風習も持っていました。舟に乗って海を渡る技術もあれば、彫刻や工芸品を作ったり、フルート状の楽器を作って音楽を嗜んだりするような高度な文化もありました。葬儀の風習もあったようです。

そんな優れた種族であったネアンデルタール人が、なぜ絶滅してしまったのでしょうか。われわれ人類と、どこで明暗が分かれたのでしょうか?

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写真=iStock.com/altmodern
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ウィルスに感染しやすいネアンデルタール人

ネアンデルタール人については、現在では遺伝子も採取でき、かなりのことがわかってきています。その中には、彼らがウィルスに感染しやすい遺伝子を持っていたとする研究もあります。

世界中で猛威を振るった新型コロナウィルスに関しても、人種の違いによって感染しやすさに差が生じていることを証拠立てる調査結果が出てきていますが、それを思えば、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間でそういう違いが生じていたとしても、まったく不思議ではありません。