日銀は「流動性回収計画」を本当に実行できるのか

繰り返しになるが、7月末の金融政策決定会合で日銀が決めた「流動性回収(=国債買いオペの減額)」は計画にすぎず、実行したわけではない。前述の通り、直近の株価急落の動きを見ただけでも、実行は難しいと思う。

そうでなくとも私は、7月会合前から「国債買いオペ減額」が発表されても、それは計画倒れの「空手形」に終わるだろうと主張してきた。

日銀は1カ月間かけて集めた市場参加者の意見を参考に「国債買いオペ減額」の計画を決定したようだが、そんなものは何の役に立たない。

日銀がもし「毎月1兆円の買いオペを減額すれば、どのくらいまで長期金利は上昇すると思いますか?」と聞いてきたので、マーケット参加者は「1.5%くらいだと思います」と答えたとしよう。この「1.5%くらいだと思います」との回答は「1.5%くらいだと思いますから、皆さん買ってくださいね。皆さんが買ってくれて暴落が止まったら、私も買いに入ります」という意味でしかない。

国債価格暴落が始まり、すでに保有している保有国債の評価損が毎日急拡大していく中で新規購入ができるサラリーマントレーダーや銀行員などいやしない。

「財務省は民間に国債買い余力がある」というが、8月5日の日経新聞「国債村、消えたプレーヤー」には「『財務当局は大量の預金を抱える国内銀行がその空白を埋める』と切望する」とある。しかし余力があっても、今と同じ値段で買うわけがない。まさにその通りなのだ。

写真=iStock.com/Osamu Takeishi
※写真はイメージです

日銀が買わない国債を、誰が引き受けるのか

年によって違うが、この10年以上にわたって年間供給の6割~9割近くを購入してきた最大の需要者が撤退を始めたら、いかなるマーケットでも価格は暴落する。金利で言えば暴騰するのだ。私は10%程度の長期金利上昇では到底終わらないと思っている。

また財務省は海外の日本国債の買い手を探すプロジェクトを開始するというが、世界ダントツで財務状態の悪い国の発行する国債でありながら超低金利なのだ。しかもその超低金利を支えていた日銀が購入から撤退を開始するという。

そんな国債など誰も買わないのは明白だ。もちろん数十%まで長期金利が上昇すれば買い手は現れるだろうが、それでは日銀も日本の財政も破綻する。

最大需要者の撤退で価格が暴落することに関しては国債村の人間が先を争って我先に逃げ出した1989年12月の資金運用部ショックで市場は十二分に経験している。

当時の国債の最大購入者であった資金運用部(年間発行国債額の19%を購入していた)が購入中止を発表したとたん、0.6%だった長期金利は2.6%まで急騰した。大慌てした大蔵省は購入を再開した。それと同じだ。歴史は繰り返す。