株価の下落がリーマンショック並みとなりスタグフレーション(不況下のインフレ状態)で株価下落で長期金利上昇ともなれば、日銀はとんでもない債務超過に陥る。日銀も円も即ドボンだ。

「持ってはいけないはずの株の評価益」に頼って債務超過を逃れえている中央銀行などぶざまなこと甚だしい。それが世界に知れ渡るだけで日銀の信用(=円の信用)は失墜する可能性もある。

見出しに踊る「金利上昇」の文字
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「国債買い入れの減額」はやっても地獄、やらなくても地獄

7月31日以降の世界の株価、特に日本株の下落を見て、植田総裁は肝を冷やしたことだろう。流動性回収の計画だけでこれだけの株価下落を招いたのだから。

もし本当に流動性の回収を始めたら、株価はどれだけ下落するか? との恐怖感を味わったと思われる。

この株価急落を経ても、果たして植田総裁は、「日銀と円のドボン=紙くず化」のリスクを背負ってでも流動性回収計画(=国債買いオペの減額)を実行に移せるだろうか?

かといって、国債買いオペの減額計画を白紙に戻したら、「日銀のインフレ対応能力は皆無」であると世界中にしらしめ、円安が急速に進行(円暴落)することになるだろう。

「国債買いオペ減額」は実行されることのない空手形と言うことになるが、世界は過剰流動性回収による世界株式の大暴落からは逃れられることになる。

計画を実行に移せるかどうか。日銀にとって9月の金融政策決定会合は、7月会合以上の難題に直面すると言っていい。

マスコミのミスリード…いまも金融緩和状態は続いている

これまで日銀があたかも金融緩和をやめたように報じられているが、実際は異なる。

日銀はこれまで通り、毎月6兆円の国債購入を継続すると年間72兆円となる。2024年に満期が来る保有国債は67.1兆円(※注)だから、このままだと年間5兆円、保有国債が増える(=市中に更にお金をばらまく=緩和の強化)。

7月会合で日銀は「四半期ごと国債購入額を月額4000億円減額する」と発表したが、最初の四半期が終了して初めて「緩和強化」をやめたことになる。それまでは引き締めでもなんでもない。

クルマの運転に例えるとこうだ。運転手が加速をやめて、最高速度で走り続けている(ブレーキを踏まず)ということだ。少なくとも、あと数カ月はお金を日ごとにまき続ける(=クルマでいえば加速を続ける)、量的緩和の強化が続くのだ。他国がばらまいたお金を一所懸命回収しているのと反対の行動を、日銀は続けるわけだ。

マスコミ各社は、日銀が今年3月の決定会合を機に金融政策を転換したかのように書くが、とんでもない。上記の具体例を出すまでもなく、賢明な読者はよくおわかりいただけるはずだ。

※今年3月7日の参議院財政金融委員会で、私の質問に財務省の正木日銀局長は「日本銀行が保有する国債のうち、2024年中の償還予定額は67.1兆円でございます。このうち、10年利付国債は28.2兆円でございます」と答弁している。