FRBのように年間の利息収入が27兆円もある中央銀行なら話は別だが、日銀のnet金利収支は令和5年度、2.1兆円、令和4年度1.5兆円、令和3年度1.2兆円しかない。ここで現在0.25%の日銀当座預金金利を0.5%まで引き上げ2.5兆円の支払い金利増となれば「損の垂れ流し」となる。米国のように政策金利を5.25%とか5.5%まで引き上げたら気の遠くなるような損の垂れ流し(負の通貨発行益)となる。

たしかに令和5年度の税引き前当期剰余金はプラスだが、為替評価益(1.3兆円)や本来保有してはいけないはずの株式ETFの運用益(1.2兆円)など特殊要因が多い。このような収益に頼って損の垂れ流しを回避している中銀など、他国から信用されるとは思えない。このような状況で日銀に利上げはできるのだろうか? 日銀の信用は保てるのだろうか? という話となる。

「円安が止まった」と喜んではいけない

ドル円相場は、日米金利差だけどうこうなるものではない。デイトレーダーやプログラム売買みたいな発想で為替予想をする次元ではもはやないのだ。パブロフの犬ではないのだから、頭を使わなければならない時だ。

今後、注目するべきものは、①ばらまかれたお金の回収度合(他国との比較)と、②いつ日銀が債務超過に陥るか、の2点に尽きる。

これらを考えると円の将来を楽観することは全くできない。

たくさんの100ドル紙幣
写真=iStock.com/JuSun
※写真はイメージです

私のXのフォロワーが、私が参議院予算委員会の公聴会で日銀OGの河村小百合氏(日本総合研究所主席研究員)と議論をするYouTube動画を見つけてくださった。5年前のやりとりだが、当時はほとんどの方に理解されていなかったし、「そんなことになるわけない」と思われた方が大勢いらっしゃったと思う。しかし、今となっては私の指摘をご理解いただける方がずいぶん増えたのではないかと思っている。

この動画を見ても、いまだに日銀には問題ないや、と思われるのなら、あまりに脳天気だと思わずに得ない。是非視聴をお勧めする。

これまで述べたように、日銀は7月会合を無難に乗り切ったかのように見えた。しかし待っていたのは世界同時株安であり、日本株の独歩安だった。日銀が生み出したひずみが、世界の株式市場の動きに反映され、日本株の急落に至らしめたのだと私は思う。

日銀と円、そして財政の持続性が、今の日本における最大の問題である。植田総裁は金融政策決定会合のたびに、こうした難題と向き合わなければならない。短期的にドル円が円高に振れようとも、相変わらず円の紙くず化は近いと私は思っている。日銀の財務の健全性は日ごとに悪化しているからだ。

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