私が、「国債買いオペ減額計画」は一度実行しても、金利暴騰に大慌てして、再度買いオペ額を元に戻すだろうと思っている。その意味で「空手形」なのだ。日銀は世界に醜態をさらし、インフレに対する武器ももう何も残っていないことを強く世界に印象付ける。

その方針変更自体が円の大暴落の契機になるかもしれない。直近では急激な円高で相場はパニック状態になっているが、日銀が抱えている問題は、これまでも、これからも、何も変わっていないのだ。

一万円札
写真=iStock.com/itasun
※写真はイメージです

日銀の「流動性回収計画」は見掛け倒しである

ところで、7月31日の「国債買いオペ額を2026年1~3月に月間3兆円程度へと半減させる」との決定は「国債購入額半額」との言葉で、日銀がものすごい勢いでお金を回収するかの印象を市場に与えた。

おかげで円安進行に歯止めがかかり円高が進んだ。しかしながら、その一方で日本を筆頭に世界中の株式市場を震撼させた。株式市場の反応を予想し得なかった日銀は円安防止のために意図的に誤解を招こうとしたのかもしれない。

しかし、重要なのは、日銀の「国債保有額がどれだけ減るか」であり、「毎月の購入額を半減させること」ではない。中央銀行の国債保有額は、ほぼばらまいたお金の量と一致するから保有額が重要なのだ。

日銀が打ち出した悠長な方法(満期待ち・国債買い入れ額の減額)では到底達成できない。保有額があまりに膨大だからだ。今までお金を供給するためにしていたオペレ-ション(=国債買いオペ)と真逆のオペレーション、すなわち国債売りオペを行わなければならない。その上、年間供給の6割~9割近くを購入してきた最大の需要者である日銀が売りに回ったら混乱の極みだ。国債価格は大暴落(金利は大暴騰)してしまう。できるはずがない。

毎月の購入額の3兆円の半減では、日銀の国債保有額(=お金のバラマキ)は2年間でたったの7~8%しか減らないのだ。ジャブジャブジャブにばらまいたお金がジャブジャブになるだけの話だ。それでは円安が止まらない。だから日銀は、わざと誤解を招く表現にしたと邪推してしまう。誤解だけでは長期的円安進行に歯止めはかからない。

他国の中銀はQTでお金の回収が終わりに近づいている。一方、日本だけはジャブジャブの状態。金利を更には上げられない上に2年後もお金ジャブジャブなのだから円安が止まるわけがない。