では実際に、日銀が流動性回収計画(=国債買いオペの減額)を実行に移したらどうなるのだろうか。この数日間の動きを見ると、私はリーマンショックよりはるかに大きなショックが起きる可能性は大だと考えている。

今後、流動性回収計画(=国債買いオペの減額)の実行予定日まで、買い戻しがあるたびに、ショックを予見する世界の投資家は、買いポジションを減らしていくと想像される。それがプロというものだ。

金利上昇・株価急落で、日銀は「債務超過」に陥る

世界中の株価が下落を開始すれば世界の中央銀行はあわてる。しかし、今まで政策金利を引き上げてきた中銀は、引き締めてきた金融政策を再び緩和気味に傾ければなんとか対処可能だ。

しかし日銀は違う。緩和に戻すといっても、量に関しては、まだ計画の発表段階でしかなく、金利に関しても政策金利がたった0.25%と「シミ程度」しかない。再び金融政策を緩める余地はほぼない。

更なる大問題は、中央銀行の持続性に問題が生じることだ。株価の下落は日本最大の株主である日銀に巨大な債務超過を発生させる。そうなれば、その発行する通貨も信用を失墜し、円は紙くずとなってしまう。

G20のなかで、金融政策目的で株を保有している中銀は日銀以外ない。正統派金融論は「債務超過事態に陥ることを避けるために中央銀行たるもの価格がボラタイルなものを保有してはいけない」と教えているとは前述したとおりだが、その基本のキを日銀だけは守っていなかったのだ。ゆえに株価の下落は日本では中央銀行の持続可能性に、クエッションマークがつく超重大事項なのだ。

日銀通り
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

2024年3月末の日経平均株終値は4万0369円。国債10年物金利は0.732%だったが、

・株の評価益は 37.2兆円
・保有国債評価損は (9.4兆円)
・留保 13兆円

したがって日銀は約41兆円の純資産だった。円が今まで大暴落していないのも理解できる。

日銀の債務超過は「日本円の紙くず化」を招く

ところで私の計算によれば長期金利は0.1%上昇するごとに2.9兆円の評価損が増える、株価は日経平均1000円下落するごとに1.6兆円評価益が減る。

だとすると執筆時(8月5日)の日経平均終値が3万1458円。長期金利15時時点で0.75%なので

・株の評価益 23兆円
・保有国債評価損 (10兆円)
・内部留保 13兆円

したがって純資産は26.0兆円。純資産は今年3月末の41兆円から26.0兆円と急落したと推定される。

長期金利は7月の利上げ前の3月末レベルまで下落したのでこれ以上の金利低下(=評価損の縮小)は考えにくい、今後長期金利が7月の利上げ前の水準1,1%まで戻ると仮定すると、株が今日のような下落を2回分すなわち約8000円弱の下落で内部留保まで吐き出して債務超過に陥る。しかも政策金利の0.25%への上げで支払い金利増加による損の垂れ流しまで始まる。