つまり、日銀は③「株価が暴落しない程度の小規模の国債買いオペ減額」をクリアできなかった。多くのマスコミや識者は米株の下落を「米国経済減速の予想のせい」と分析した。が、この分析には私は賛成しかねる。

その理由の一つ目は、日本株の下落の方がはるかに大きく独歩安と言っていいからだ。最近の米国株は弱い経済指標が出ると利下げ期待で上昇していたにも関わらず、今回は逆に反応した。それも非常に大きな下落だったのが2つ目の理由だ。

ゆえに、直近の世界同時株安の原因は、正しくは日銀が流動性の供給を絞る(=国債買いオペの減額)決定をしたことによるものだと言える。

株価急落、日本株の独歩安の引き金を引いた

今までの株価上昇局面では「世界の株価上昇は日本の流動性供給によるもの」との分析が存在していた。大規模に過剰流動性が供給されていた日本の投資家が世界の金融資産を買い漁っていることが世界株価上昇の理由との分析だった。

それが正しいのなら(私は正しいと思っている)、日銀が流動性の供給を絞る(=国債買いオペの減額)決定で、その逆回転が始まると予想し、「人より早く株から逃げよう」と考える人が多く出るのも当然だ。「流動性が減少すれば、バブルは弾ける」。これはプロの投資家にとっては当たり前の発想だし、実際、過去のバブル破裂の主因でもある。

2021年5月のロイター通信の記事に「クロスボーダー・キャピタルの見積もりでは昨年3月以降、主要中銀と政府は約27兆ドルと、世界全体の総生産(GDP)の3割強に相当する資金を市場に注ぎ込んできた。これに伴って世界の株価は85%上昇し、新型コロナウイルスのパンデミックで痛めつけられた景気は回復しインフレ期待も高まっている」という記述がある。

世界最大の過剰流動性供給主である日銀が方向転換をするのであれば、世界株、特に日本株の下落を予想する機関や個人投資家が現れるのも当然のことと言える。

史上最大の下げ幅となる4451円28銭安で終了した日経平均株価の終値を示すモニター=2024年8月5日午後、東京都中央区
写真=時事通信フォト
史上最大の下げ幅となる4451円28銭安で終了した日経平均株価の終値を示すモニター=2024年8月5日午後、東京都中央区

日銀が「国債買い入れの減額」を実施したらどうなるのか

先述の通り、8月5日の日経平均株価は3万1458円で取引を終えた。これは前週末比4451円安(12.4%安)であり、下落率は1087年10月20日(ブラックマンデーの翌日)の14.9%に次ぐ過去2番目(下落幅では過去最大)である。

しかし、今後の動きは、現段階では分からない。この数日間の急落が「売られすぎ」として戻す可能性もある。戻す可能性がある理由は、日銀の流動性回収はまだ計画段階であり、実行されてはいないからだ。実行されなければ(日本以外の国の)株価下落は当面この程度で収まる可能性もある。

今後の日本株、ひいては世界株の動向は、日銀が実際に流動性回収計画(=国債買いオペの減額)を計画から実行段階に移すか否かであろう。この話題が、今後しばらく世界の株式市場の話題の中心になる可能性は大いにある。