「二国家解決」はもはや絶望的になった

一方でパレスチナ側も、特にハマスなどの武装組織は基本的にイスラエルとの妥協ではなく暴力を選んできました。もっとも戦うしか選択肢がなかったという面もあります。

いずれにせよ妥協しない両者は、自分たちが勝つまで戦い続けると主張し、永遠に剣を取ることを選択しているのです。

原則として、双方が妥協し、イスラエルがパレスチナに占領地を返還し、パレスチナ国家を樹立する「二国家解決」で決着させるしかないというのが、国際社会の基本的な了解事項です。土地と平和の交換です。しかし23年10月のハマスの攻撃を受け、イスラエルのネタニヤフ首相はパレスチナ国家の樹立を否定し、二国家解決はもはや認めない考えを鮮明にしています。

こうした点もふまえて、それぞれの論理を見ていきます。まずは「イスラエルの論理」です。なぜイスラエルは容赦ない攻撃を続けてきたのでしょうか。なぜ数万人規模のパレスチナ人を殺害してまで、軍事行動を続けるのでしょうか。なぜ国際法に違反しながらも、占領を続けるのでしょうか。

先ほども述べた通り、今回の軍事行動の理由は2023年10月に、イスラム武装組織ハマスが、イスラエルの民間人を大勢殺害し拉致らちしたことに対する報復です。軍事行動は人質を救出するためであり、国の安全を取り戻すためです。

世界中から非難されても、イスラエルはまったく気にかけない

当初はガザ北部が中心と見られていましたが、最終的には南部を含むガザ全域に及び、最初の攻撃で避難していた人たちすらも、容赦なく死のふちへと追い詰められていきました。これは多くの専門家の予想を超えるものでした。

そして、もう一つ目を引いたのは、パレスチナ人の犠牲者が増えることに対して世界から強い非難を浴びても、イスラエルがそれを気に掛けていないことです。これは後編で説明する「イスラエルの論理」が大きく影響しています。

この論理がイスラエル国内の公教育を通じて広く国民に共有され、同時にイスラエルにとって不都合な事実が国民に共有されていないことが根底にあると考えられます。

また、基本的に今回の軍事行動はネタニヤフ首相の決断によるものです。ハマスに対して徹底的に報復することで、今後の攻撃を抑止する狙いがあります。

ただ、ネタニヤフ首相はハマスの攻撃が起こる前の時点で、汚職疑惑などで世論の支持を失い、政治的に追い詰められていました。このため、ガザでの軍事行動をテコに世論を結束させ、不法に占領した土地に住む住民のさらなる支持を得て、政権の延命を図ろうとした可能性が高いでしょう。