政権を守るためなら過激派政党とも手を組む
自らを支持するアメリカのトランプ前大統領が2024年11月の大統領選で再選されることを待ちながら、少なくともこの延命戦略をとる可能性があります。つまりネタニヤフは、この状況を利用しているのです。
そもそもイスラエルは、現在のネタニヤフ政権が発足する2022年までの過去3年半で5回もの総選挙を実施しています。世論の分断もあり、選挙後にどの政党も政権を立ち上げることができない前代未聞の政治混乱の中にありました。そうした中、ネタニヤフ政権が多数派維持のため、違法な入植地の居住者に支えられ、極端な意見を持つ政党を取り込んで組閣を行ったことが事態悪化の遠因となっています。
それでも、10月7日の攻撃後、ネタニヤフ首相の決断を多くのユダヤ人が支持し続けていることも事実です。イスラエルの主要メディアも基本的には軍の行動を支持しています。イスラエルの報道機関が公平な報道をしているとは全く思えませんが、これもイスラエル国内で受け入れられています。
なぜイスラエルは「暗殺国家」になったのか
これら全ての根底には、それが正しいかどうかは別として、ユダヤ人が歴史的に持っている「内在的な論理」があります。端的に言えば、今回のハマスの攻撃は、ユダヤ人たちが持っていたその論理、つまり恐怖心と生存本能に火を付けたのです。
ユダヤ人が歴史的に強く抱いてきたこの生存本能が日々のニュースで取り上げられることは、ほぼありません。説明に時間がかかるためですが、第4章ではやや詳しい説明を試みます。
本章の解説は、パレスチナ人の立場から見ると到底納得できない部分、怒りを覚える内容も含まれます。家を壊され、家族を殺されたパレスチナ人から見れば、イスラエルは容赦ない殺人国家です。ここからの解説は、あくまでイスラエルの目線、イスラエルが掲げる正義の立場の目線だということを断っておきます。
同時に、本章は全てのイスラエル人の行動や論理を説明するものでもありません。当然のことながら、イスラエル国内にも、ユダヤ人社会にも様々な意見があります。特にユダヤ人社会は世俗的な考えを持つ人々から、宗教的な教義の下に生きる人々などを含めて多様です。パレスチナ人への敵意を剥き出しにする人々もいれば、ガザでの軍事行動は「やり過ぎだ」と批判的に考えているユダヤ人も多くいます。その点についても断りを加えておきます。