女性に選ばれる店づくりで新規顧客を開拓
②が成功した段階で、③へ移行します。既存顧客に新たな商品の導入が成功した後、このビジネスモデルを新たな顧客へ横展開していくことで、収益源を増やすことが可能となっていきます。
GSの場合、2つの横展開を図っています。1つは物理的な横展開、新規出店です。新規出店を行うことで、同じビジネスモデルを新たなエリアの顧客へ広げられます。また、もう1つは客層の横展開。既存のGSは来店客が男性中心でしたが、女性ドライバーの増加に対応すべき、女性にも受け入れられる店づくりやサービスを行った結果、客層の拡大にも成功しています。
また、新たな事業を行っていくことで、人材難の解決の糸口も見出せます。斜陽産業の中で沈みゆく業界とみられていることが人材難の大きな要因でした。そのため新しい事業にチャレンジし、そして成功を収めることで、企業の魅力を高め、新しい人材を確保することもできるようになってきました。
以上、「既存顧客と既存商品を生かした新規事業の創造」を行ったことで、需要減、価格競争、人材難の問題をクリアし、生き残ってきたのが現存するGSたちです。
「生き残ったガソリンスタンド」から学べること
GSが直面してきた「三重苦」は今後の多くの業界が直面する問題です。日本の人口減少と顧客の高齢化は、多くの業界で消費者需要を減少させています。そして、その限られたパイの中で顧客を奪い合うことで、熾烈な価格競争を繰り広げてきました。コロナ禍前までのデフレは価格競争の顚末と言えます。
さらには、経営者の高齢化も進み、2023年時点の社長の平均年齢は60.5歳(帝国データバンク2024/4/12記事より)と、ついに60歳を超えました。そして、後継者不足であると回答した企業は実に65%(出典:2020年、株式会社帝国データバンク、「全国企業『後継者不在率』動向調査」)、3分の2の会社で後継者がいないのが実態です。
需要減、価格競争、後継者難、この3つの問題を解消しない限り、日本企業が今の踊り場状態を脱し、再浮上することは困難です。
GS業界ではほかの業界よりいち早くこの3つの問題に直面し、トライアル&エラーを繰り返し、この問題を乗り越えてきました。ここで挙げた「既存顧客と既存商品を生かした新規事業の創造」の着眼点を参考に、自分の業界、自社では何ができるのかを考えてみてください。