「なんだ、この会社は!」心の中で叫んだ
私がメガネスーパーにやってきたのは、2013年6月のことだった。業績を回復させるべく、さまざまな取り組みを進めてはいたが、どこか的外れで、真逆の効果を生んでしまっているケースもあった。速やかに解決すべき課題が山積みだった。
私の経験からして、業績が芳しくない会社には共通する悪癖がある。メガネスーパーにもそれがあった。まず、ダラダラと会議ばかりしていて、物事がスムーズに決まらない。場当たりの議論が多く、うまくいかないことの原因捜しに終始する。そして往々にして、「現場」の責任にする。
「現場がこう言っている」「それでは現場が持たない」と、ふたこと目には現場、現場と口にするのだが、そんなものは欺瞞だ。幹部社員も含め、経営課題を自分事として捉えていないから、何でも現場のせいにしてしまう。自分は頭も体も動かさずに、だ。私は、社員に強く訴えた。
「すぐに『現場が』『現場は』なんて言うな。現場とは、誰のことなんだ。『現場』という名前のヤツでもいるのか。いるのなら、今すぐその『現場』をここに連れてこい!」
「現場」という「便利なウソ」がまかり通る甘えを捨てさせ、危機的な経営状態を全社で共有し、社員一人ひとりが責任感と当事者意識を持って職務にあたる――。そんなまっとうな組織に生まれ変わらせることが急務だった。
「なんだ、この会社は!」
会社の内情を知ったとき、心の中で叫ぶしかなかった。かなりタフな状況だったが、反面、大きな可能性も感じた。打つべき手を打ちつくした結果、業績が落ち込んでいるのなら「万策尽きた」と言わざるを得ない。しかし、メガネスーパーにはやれることが十分に残されていた。