若者たちの「国家公務員離れ」を食い止められるのか

最後に、今回の「技官」の事務次官起用の意義と影響について考えてみたい。

日本丸を動かす官僚機構は、もっとも優秀な頭脳集団と言われてきた。その集団を率いるのはキャリア官僚(国歌公務員総合職)と呼ばれる一群で、事務次官をトップに局長や課長など中央省庁の要職を務めている。

だが、そのキャリア官僚の中には、長く、眼に見えないヒエラルキーが存在してきた。キーワードは「事務官」「男性」「東大卒」……。つまり、「技官」や「女性」、「東大卒以外」は格下に見られていたのだ。

ところが、近年、こうした「霞が関文化」や「霞が関哲学」に地殻変動が起こりつつある。

それは、2024年の国家公務員総合職試験の結果に如実に表れた。

1953人の合格者のうち、「女性」は過去2番目に多い652人で、3人に1人を占めた。一方、「東大卒」は189人と1割を切り、現行の試験制度になってから過去最少。4人に1人は「東大卒」だった10年ほど前に比べ激減してしまった。

人事院の報道発表資料より。2024年度国家公務員採用総合職試験(春)の出身大学別合格者

つまり、中期的にみれば、性別や学歴にこだわらない土壌が霞が関全体に育まれつつあると言っていい。

そこに、「技官」で「東北大卒」の事務次官の登場である。「技官」のモチベーションも確実に上がるだろう。

「事務官」「男性」「東大卒」優位のヒエラルキーはもういらない

それは、一過性の抜擢人事ではなく、「ダイバーシティー(多様性)」を重視する時代の要請だったともいえる。

最近は、国会答弁の作成作業などで残業が多く、給与も民間の大手企業に比べて見劣りするため、キャリア官僚の魅力が薄れているという。だが、従来の「霞が関文化」とは一線を引いた人材が多用されるようになれば、霞が関の住人や志望者の意識は変わっていくに違いない。

一部のエリート官僚にだけ通用した「霞が関哲学」ではなく、霞が関の新時代を担う官僚群による国民目線に立った多様な政策が展開されることを期待したい。

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