なぜ霞が関は「優秀な人材」が採れないのか

優秀な人材が求めているのは「休み」なのだろうか。

国家公務員の人事制度や待遇を政府に対して「勧告」する権限を持つ人事院が、「週休3日」制を勧告する方向で調整していると報じられた。育児や介護といった事情がなくても、希望するすべての職員が週休3日制を取得できるよう法改正する意向だという。

今、世の中で求められている「多様な働き方」を実現するという意味では歓迎すべきことだろう。だが、新聞各紙が見出しに立てている「国家公務員のなり手不足」が狙いだとすると、果たしてその解消につながるのか。

人事院が改革に踏み切る背景には、深刻な公務員志願者の減少がある、という。特に霞が関の幹部公務員になっていく「総合職」の志願者がこのところ激減、各官庁の幹部からは「優秀な人材が採れなくなっている」との危機的な声が上がる。

実際、近年、頻発している国会に提出した法案の条文の誤りなど「かつては考えられなかった事故」(元事務次官)が起きている背景にも「現場の忙しさはもちろんあるのだろうが、根本的な人材の能力不足がある」(同)という指摘が上がっている。何としても公務員志望者の数が増えてくれないと、本来は不適格なレベルの人材が紛れ込んでくる、というわけだ。

東大・赤門
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東大生の進路志望は官僚→外資系コンサルに

2023年度春の総合職試験でも志願者が激減した。志願者全体では1万4372人で、前年度に比べて958人減と6.2%も落ち込んだが、中でも、大学院卒業者の試験志願者は1486人と170人、10.3%も減った。大卒試験は1万2886人と5.8%の減少だった。大学院卒など優秀な人材が国家公務員を目指さなくなったということだ。

高級官僚の登竜門といえば東京大学で、中でも東大法学部卒でなければ霞が関では出世できないとすら長年言われてきた。もちろん、東大法学部卒で固めてきた「多様性のなさ」が霞が関の政策作りの画一性を生んできたという批判も根強い。東大一辺倒ではなくさまざまな大学から官僚になるのは歓迎すべきことなのだが、そもそも志願者全体の数が減っていることで、多様性どころではなくなっているわけだ。

その東大生の間でも、公務員を志望する学生が激減している。朝日新聞の報道によれば、2022年に東大を卒業した学生の就職先で最も多かったのが外資系コンサルティング・ファームのアクセンチュアだったという。2018年にトップに躍り出て以降、2019年は2位で、2020年以降はトップが続いているらしい。