「終身雇用」「年功序列賃金」はもはや売りにならない

大学を卒業して大手コンサルに入った若手コンサルタントは、「うちも東大の仲間が圧倒的ですが、楽だと思って来た人は皆無です。実際、翌朝までに解決しなければいけない問題が生じれば、深夜まで普通に働いていて、誰も文句は言いません。何しろ成果を上げなければ居場所がなくなるのがコンサルですから」と言う。

もちろん日系企業に比べて給与が高いという点も魅力だが、それよりも「バリバリ仕事をして」、「それがキャリアパスにつながる」のが最大の魅力だという。

キャリアパスというのは次のキャリアに向けて実力が付くということである。

東大卒業生の就職先上位から、日本の伝統的企業が消えているのも、そうした会社の売り物である「安定性」に今の学生が魅力を感じなくなっていることが大きいのではないか。そもそも「安定性」と言っても、売り物だった「終身雇用」や「年功序列賃金」は大きく崩れ始めている。

そもそも「時間に縛られる働き方」ではまわらない

国家公務員に話を戻そう。

国を引っ張っていく高級官僚に、人事院は「週休3日」を希望すれば取れるような働き方を志向する人材がふさわしいと思っているのだろうか。

就任会見を行う人事院の川本裕子総裁=2021年6月24日、東京・霞が関
写真=時事通信フォト
就任会見を行う人事院の川本裕子総裁=2021年6月24日、東京・霞が関

北朝鮮のミサイル発射を例に挙げるまでもなく、国家は常に「危機」と隣り合わせだ。24時間、いつ何時、働かなければならなくなるか分からない。「今日は休暇ですから」と言っていられないのが国家公務員だ。

労働基準法は休日や労働時間を厳しく規定することで成り立っているが、政策立案やその執行に当たる霞が関官僚は、本来、時間に縛られる働き方が実態に合っていない。典型的な裁量労働職場だ。そこに「週休3日」というガチガチのルールを持ち込むことは、公務員のそもそもの働き方を変えてしまうことになりかねない。

それで公務員人気が復活するのなら良い。だが、公務員よりも過酷な働き方をしているコンサルに優秀な人材がいくことを考えれば、週休3日が切り札になると考えるのは間違いではないか。