「重罪犯」トランプに叩きつけた挑戦状

ハリス陣営は、バイデン大統領の支持を受けてから1週間足らずで、2億ドル(約308億円)という記録的な資金調達を達成した(7月28日付プレスリリース)。そのうち、66%が、これまで寄付をしたことがない人々によるものだという。つまり、草の根の支援だ。

また、ハリス氏は、「史上最も労働者寄りの大統領」バイデン氏の後継者として、米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)やサービス従業員労働組合(SEIU)など、多くの労働組合の支持も取り付けた。

元検察官のハリス氏の陣営は、バイデン大統領の撤退で、今やアメリカ史上最高齢の大統領候補になったトランプ前大統領の「年齢」に加え、不倫口止め料不正処理事件で有罪評決を受けたトランプ氏の「重罪犯」という経歴にフォーカス。7月25日付プレスリリースで、トランプ前大統領を「78歳の犯罪者」と攻撃した。

大統領候補(推定)として初めて臨んだ激戦州ウィスコンシン州の選挙集会では、「どんな国に住みたい? 自由と思いやり、法の支配の国? カオス(混沌)とフィア(恐怖)、ヘイト(憎しみ)の国?」と聴衆に呼びかけ、「戦う以上、私たちは勝つ!」と、トランプ氏に挑戦状を突きつけた。

ハリスがトランプ陣営を煽る理由

ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムニスト、ダニエル・ヘニンガー氏が「【オピニオン】ハリス氏勝利があり得る理由」(原文7月24日付・翻訳記事26日付)のなかで分析するところによると、こうしたハリス氏の攻撃には、「『大統領選に挑む初の黒人女性』に対するトランプ氏のもっと下品な発言を引き出す」という狙いが隠されている。

そして、「そうした発言は、暗殺未遂事件後にトランプ氏が大衆から得た支持を相殺することになるだろう」(上記記事から引用)。

共和党はバイデン大統領の続投を望んでおり、同氏の撤退とハリス氏の登板に「不意打ちを食らった」というのが、大方の見方だ。米アトランティック誌は、記者のティム・アルバータ氏による、次のようなタイトルの記事(7月21日付)を掲載した。

「This Is Exactly What the Trump Team Feared: A campaign that had been optimized to beat Joe Biden must now be reinvented.(トランプ陣営が恐れていたことは、まさにこれだ――打倒ジョー・バイデンに向けて最適化された選挙戦は今、見直しを迫られている)」