トランプが見逃していた「ハリスの潜在能力」

ウォール街の著名投資家アンソニー・スカラムッチ氏も7月25日、米CNNに出演し、こう語っている。「彼(トランプ氏)は今、動揺している。どのようなパンチを(ハリス氏に)繰り出せばいいかを探っている」

スカラムッチ氏には、2018年6月、米・外国報道協会(FPA-USA)がニューヨーク・マンハッタンで主催した記者会見で会ったことがあるが、彼はトランプ政権下の元広報部長だ。2017年7月、ホワイトハウスの広報部長に任命されながら、10日で解任された。政権離脱後に反トランプ派に転じた数多くの元側近の一人だ。

ストラテジストのスペンサー氏が複数の共和党関係者から聞いた話では、共和党はハリス氏のマイナス面にのみ目を向け、大統領候補になりうる人物とはみなしていなかったという。ハリス氏が選挙戦に呼び込める黒人女性や若者、草の根団体、献金者といった、彼女の「潜在能力」を無視していた。

事実、ハリス氏は7月24日、銃暴力の撲滅を目指す学生らが立ち上げた米団体「March for Our Lives(私たちの命を守るためのマーチ)」から、同団体初の政治的支持を獲得している。バイデン大統領にもできなかったことだ。

「ハリス氏は大統領候補になりえない」という思い込みは「慢心」を生み、慢心はトランプ陣営の足をすくいかねない。

トランプとハリスは「重罪犯VS. 元検察官」

トランプ氏は、バイデン降ろしのきっかけになった6月27日の討論会で勝利への自信を深め、7月13日の暗殺未遂事件で世論を味方に付けた。そして、7月15~18日に開かれた共和党全国党大会で、トランプ氏の高揚感は頂点に達した。

全国党大会の翌週初めには、ラストベルト(さびついた工業地帯)出身の若き副大統領候補J.D.バンス氏(39)が、故郷に錦を飾るオハイオ州での単独選挙集会に臨み、トランプ陣営は「圧勝」に向けて突き進むはずだった。だが、戦況は一変した。

重罪犯と元検察官という、トランプ氏とハリス氏の「対決の構図は、トランプ氏にとって不利だ」(スペンサー氏)。