WSJ「トランプは千載一遇のチャンスを逃した」
トランプ陣営がバンス氏を副大統領候補に選んだことも裏目に出た。バンス上院議員(オハイオ州選出)は、ハリス副大統領など、子供を産んでいない民主党議員らを揶揄するような発言(2021年)を批判され、ハリウッドスターのジェニファー・アニストン氏をはじめ、女性から猛反発を食らっている。
バンス氏は2022年、連邦レベルでの人工妊娠中絶禁止法を支持すると示唆したが、この発言も、中絶問題を選挙戦の争点とするハリス陣営に、またとない攻撃材料を与えることになった。
トランプ氏を若くしたような副大統領候補は岩盤支持層には受けるだろうが、郊外の女性や無党派層を遠ざけ、トランプ陣営に新たな票をもたらさないという声が目立つ。今となっては共和党もバンス副大統領候補の選択を悔やんでいる、と報じられている。
ウォール・ストリート・ジャーナルも、トランプ氏が負ける可能性に言及し始めた。前述したコラム「ハリス氏勝利があり得る理由」は、次のような言葉で締めくくられている。
「トランプ氏の大統領候補としての指名受諾演説は、勝利を確実にできるチャンスだった。彼はそのチャンスをつかめなかった。集会でのトランプ氏の演説がこれ以上良くならなければ、ハリス氏には勝利のチャンスがある」
指名受諾演説で見えたトランプの「本音と建前」
2016年と24年の大統領選・共和党指名候補争いに出馬し、現在は反トランプを前面に掲げるクリス・クリスティ前ニュージャージー州知事も7月19日、米ABCのトーク番組「The View」に出演し、トランプ氏の指名受諾演説を批判した。
トランプ前大統領は共和党全国党大会で1時間半余りにわたって演説を行い、冒頭で「団結」を訴えた。だが、クリスティ氏の見立てでは、トランプ氏は「団結」など信じておらず、最初の15分間はスピーチ原稿を嫌々読んだため、「熱意」も「エネルギー」も感じられなかった。一方、「演説の3分の1を占めるアドリブでは本来のトランプ節に戻り、生き生きしていた」と。