店内の広さはメルローズ店の2倍ほどだろうか。小さな子どもを連れた休日のお父さんらしき男性客が、Tシャツの棚を探っていた。メルローズ店よりも明らかに落ち着いた服装の客が多い。
たくさんの客が出入りする午後の忙しい時間帯に、リージョンマネジャーのダコタさんが対応してくれた。
「セカンドストリートでは、現場のバイヤーが買い取り価格を決められるよう、トレーニングを受けています。だからこそ、お客さまも信頼して高価格帯のラグジュアリーアイテムを売買してくれるのでしょう。そして、高級品がこれだけ集まっているのを見れば、また正規品を売りたい人が集まってきてくれる。この好循環ができているのだと思います」
「これなら勝てる」と確信した
確かにアメリカの古着店よりも商品陳列など工夫されている点もあるが、素人目から見て、それ以外に大きな違いは見当たらない。特に「日本推し」をしているわけでもない。いったい何がセカンドストリートの成功要因なのだろうか。現地法人CEOの菊地雅浩さんにさらに尋ねた。
菊地さんはアメリカ進出を計画した張本人であり、いまも現地で指揮を執っている。2014年、バッファローエクスチェンジを数店視察した時に、「これなら勝てる」と確信したという。
「まずは、取り扱っている商品の幅が極端に狭かったんです。当時バッファローエクスチェンジでは、だいたい5ドルから30ドルぐらいまでの商品をメインに扱っていて、50ドル、100ドルといった商品がほとんどありませんでした。量産されたマス向けのものとして世の中に流通しているものばかりを扱っていましたね」
それは、当時のアメリカの古着ショップ市場全体にも当てはまる傾向だった。その理由を菊地さんは、リスクを避けるためだと推測する。
「規模の大きな古着チェーンにとっては、高い物を買って在庫で抱えることは大きなリスクです。正しく査定して、売り切る技術がないからこそ、売れるとわかっているものしか扱っていないのだろうと予測しました」
「一律30%で買い取る」がアメリカの常識だった
さらに、服を売りに来る顧客とのやり取りにも違いがみられた。
「アメリカではだいたいどこの店も、リセール価格の30%で買い取るのが基本なんです。それに、売れるものしか買い取らないので、売りに来ても持ち帰るお客様が多かったですね」
古着文化が浸透しているアメリカで、当時はどの店も自ら値付けする眼力を持っておらず、どんなコンディションでもどのカテゴリーでも、一律30%でしか買い取りできていなかった。しかも、マス向けの量販品ばかりを扱い、それ以外の商品を客が持ってきても受け取らない。ハイブランドや尖ったファッションセンスの服がなければ、ファッション感度の高い人たちの支持は得られないだろう。
「おそらく、査定が難しいのでしょう。たとえばスニーカーや中古車のように型式があるものであれば、価格を調査しやすいのですが、服は種類もカテゴリーも素材も無限にありトレンドも加味するので、一定の価格設定を決めにくいんです」