コロナ禍がもたらした店舗急拡大

セカンドストリートの人気を確固たるものにしたのは、ニューヨークでの出店と、直後に発生したパンデミック下での戦略だった。

2020年2月22日、マンハッタンの中心地にあるノーホー地区に6店舗目をオープン。ここで菊地さんは、あえて競合店であるバッファローエクスチェンジの隣に出店した。

目的は単に話題作りだけではなく、当時わずか6店舗だったセカンドストリートが、40店舗以上展開するバッファローエクスチェンジと肩を並べる存在であることを示すことにもあった。有名人やインフルエンサーを集めたオープニングレセプションを大々的に開催したことも、流行感度の高いニューヨーカーたちの耳目を集めることに貢献し、ノーホー店は予想以上の好スタートを切った。

その1カ月後、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界中を襲い、全店舗が一時閉店を余儀なくされる。しかし、このコロナ禍が、セカンドストリートがアメリカで急成長する転機となった。

カリフォルニア州では2020年3月19日から、ニューヨークでは同月23日からロックダウンが始まった。ロックダウン中の4月の失業率は世界恐慌以来最悪の14.7%を記録し、多くの人が職を失ったが、一方で全く影響を受けない層もいた。仕事をリモートに切り替え、旅行も買い物も制限された人々のお金は、株式投資やオンラインショッピングに流れた。

SNSで知名度を一気に高めた

「ECサイトでの売れ行きを見て、これはロックダウンが解除されたら即店を開けなければならないと確信しました。外出許可が出たらすぐに買い物に出たい顧客がたくさんいるだろうと考えたんです」(現地法人CEO・菊地さん)

そこで菊地さんは、カリフォルニア州のロックダウンが解除された直後、メルローズ店のオープンに踏み切った。他の店舗がほぼ閉まっているなか、店が開いていることが口コミで広がり、購買欲求を数カ月間ため込んだ客が店に押し寄せた。

ロングビーチ店の中の様子
筆者撮影
コロナ禍で自由に買い物ができなかった。その反動がセカンドストリートの追い風になった。

客数こそロックダウン前より少ないものの、売上は前年(ロックダウン前2019年)と比較して1.5倍に上昇。さらに、アメリカ政府から2020年3月、12月および2021年3月に、一人当たり最大1400ドルの給付金が配られたことも、各店の売上上昇に拍車をかけた。オンラインからの購入者が増えたことから、この時期にECサイトを強化。

また、SNSを得意とするスタッフを積極的に採用して日々の運用を任せ、インスタグラマーと積極的にコラボするなどして知名度拡大を図った。2021年4月からはTikTokも開始してインスタグラムと連携させるなど、SNSマーケティングに力を入れた。その結果、ニューヨーク出店前には4000人だったフォロワーが、4年後の2024年には23万人まで増加している。

この成功により、2018年から毎年2、3店舗ずつ増やしていた出店数は、2022年にはプラス13店舗、23年にはプラス12店舗と一気に拡大していく。

「以前古着店を利用したことのある700人に対して、セカンドストリートの知名度調査をおこなったところ、LAでは80%台後半、NYでは95%を超えました。まだ出店していない州からも、インスタのDM経由で『早くうちの州にも出店してほしい』と要望が次々と届くようになっています」

ロングビーチ店の中の様子
筆者撮影
SNSの効果もあり、一気にアメリカ市場で知名度を高めることに成功した。