だからといって、顧客に潜在的な欲望がないわけではない。査定額に納得のいかない顧客や、売れずに突き返された服を抱え、不満を抱く顧客も多いはずだ。アメリカのリユース市場は、店側の都合で展開されており、顧客の要望に応えられていない――。

セカンドストリートの仕組みを日本から持って行けば勝てると、菊地さんは確信した。

他社がマネできない、日本独自の「空気を読む査定」

型式もなく、カテゴリーも無限にある古着。古着大国であるアメリカになかった査定の仕組みを、セカンドストリートは「非常に日本的な方法」で、独自に構築していった。

「この商品はこの価格で売れるという中心価格をまずは(スタッフに)教え込んでいくんです。すると、前にあの商品がこのくらいで売れたから、新しく出たこの商品はこのぐらいで売れるだろう、と予測ができるようになる。訓練を積んでいくと、同じ商品でもこのくらいの品質ならいくらで売れる、という『感覚』が、身についてくるんです。これを私たちは『感性の標準化』と呼んでいます。はっきりとした正解がないものに対し、全員がほぼ同じ値段をつけられるように感性を統一化するのは、『空気を読む』ような作業に近い。これが日本的なんでしょうね」

この『空気を読む査定方法』は、セカンドストリートがかつて日本で実践していた方法だった。「模倣の困難性をいかに持つかが、その会社の強みだ」と、菊地さんは語る。まねることのできない独自の査定方法は、日本でもアメリカでも、セカンドストリートの強みとなったのだろう。

レジのスタッフは忙しそうだ
筆者撮影
客と対話しながら査定するアメリカでは、「空気を読む」柔軟な査定が受け入れられているようだ。

現在日本法人では、システム化により本部で一元的に価格を調整できるようになった。アメリカ法人でも売買情報や顧客滞在時間など個別のデータ管理はしているものの、現在でも現場スタッフが顧客と対話しながら、『空気を読む査定』で価格を決めている。

売りたくても売れない…客の不満に応えた

また、同社では顧客が持ち込んだものを基本的に全部買い取っている。買い取っても店で扱えないものは、安値で買い取ってくれる業者に販売するか、途上国に寄付するなどしているという。

「うちでは高い物にはリセール価格の50%をつけることもあれば、安い物には10%以下をつけることもあります。お客さまはたいがい、高い物と安い物を一緒に持ってこられるので、一律30%しかつけられない店と比べると、総合的にうちの方が高く売れるんです。さらに全部買い取るので持ち帰りもありません」

売値の30%、しかも売れ筋のよい平均的な商品しか買い取らないなど、店舗側の都合によってビジネスを展開するアメリカの古着店に対し、セカンドストリートは柔軟に価格を設定し、持ち込んだ商品は全て買い取る「顧客本位」にこだわった。

メルローズ店開店から約3カ月後、買取の持ち込みは1.6倍程度まで増加。どちらに売るのが得か、客が理解するのに時間はかからなかった。

取材に応じてくれたロングビーチ店のスタッフ
筆者撮影
取材に応じてくれたロングビーチ店のスタッフ。向かって右がリージョンマネジャーのダコタさん。