最新の相続税、贈与税をばっちり勉強してわが息子に100%残す
父親は相談に訪れた理由を説明しました。
「申し訳ありませんが、私は税理士ではありませんので、鈴木様の具体的な税額を計算してご提案することはできません。しかし、税金の制度についてはご説明できますので、ご案内いたしましょう」
私は説明を続けます。
「ご承知のように、1年間に贈与を受けた金額の合計が110万円以内であれば、贈与税はかかりません。お元気なうちに財産の一部を贈与しておくことで、相続財産が減少すれば、結果的に相続税が減少することになります。ただし、贈与する親が亡くなった時点で3年以内に贈与した分については、相続財産に組み戻して相続税を計算することになっています」
「病気になってからあわてて贈与しても、ダメだということですね」
「そうなんです。ところが、今年に法改正があり、この期間が3年から徐々に7年に伸びることになります」
「7年かぁ。今年から贈与を始めても、あまり効果はないかもしれないなあ」
「いやいや、お元気で長生きしていただければと思いますが、亡くなる時期だけは誰にもわりません。その点、相続時精算課税制度を利用すると、確実に非課税で贈与をすることができます」
「その制度なら調べましたよ。贈与をしても贈与税を払わなくてよい制度ですね。でも、結局は相続税の対象になってしまうのでしょう」
「よくご存じですね」
私は、父親が相続税の制度についてよく研究しているのを感じました。
「確かに、相続時精算課税制度を使って贈与をすると、その時点では一定額までは相続税を払う必要はありませんが、贈与した資金は相続税の対象になりますので、節税策にはなりません。資金を早めに渡すことができるというメリットだけでした。しかも、この制度を利用した場合、年110万円の贈与税の基礎控除は使えませんでした」
「だから使っても意味がないとわかったんです」
「ところが、こちらも今年に制度が変わりまして、相続時精算課税制度を利用しても、年110万円の基礎控除が適用できるようになりました」
「でも7年以内に死んでしまえば、やっぱり相続税の対象になるのではないでしょうか」
「いえ、相続時精算課税制度を利用していれば、相続発生7年以内の贈与でも相続財産に組み戻す必要がないのです」
「すると、相続税の基礎控除を利用するためであっても、相続時精算課税制度を選択しておけばよい、ということになりますね」
「そのとおりです。昨年までは、相続税の節税策としては相続時精算課税制度を利用しない方がよいと言われていましたが、今年からは相続時精算課税制度を利用した方が安心して贈与ができるようになりました」
「なるほど。これから基礎控除の範囲内で毎年贈与していけば、ある程度は相続財産を減らすことができますね」
母親も付け加えます。