【グループ 考え方に問題がある】何でもAIタイプ

バカにせずうまく味方につけたい

AIの能力が進化して、何でもAIに聞けば答えを教えてくれると考える人が増えてきました。

しかし、AIが万能だと思うのは間違いです。ある会合で、ある学者さんが生成AIに「日本に今一番必要な経済政策は何か」というプロンプトを与えました。答えがスラスラと出てきたらしく、この学者さんは「こんな感じで答えが出てくるんですよ」と感心していました。

しかし、その政策を一つ一つ吟味すると実につまらない。なぜかというと、AIは既存のものを整理するだけだからです。例えば「自民党や日本維新の会では考えられないような経済政策は何か」と質問すると、現在のAIは途端に答えられません。過去のことを整理するのは得意でも、新しいことを考えるのが苦手なようです。

人間にあってAIにないのは、「持論」です。持論があるから、未来に対して過去や世間にとらわれない新しいビジョンを描けるのです。そして人間が持論を持つには、ベースとなる知識を蓄えて自分の頭で考え自分軸を構築する必要があります。何でもAIに聞けば済むと考えている人は、自分らしい持論が持てず、それこそAIに代替されていくでしょう。

ただ、僕はAIを積極的に活用する人を非難しません。AIを使うかどうかも、人それぞれの持論だからです。組織には性別や年齢、価値観が異なる多様な人材が必要です。部下が上司と違った考え方を持っていても、心理的安全性が確保されて安心してモノがいえる組織でないとダメです。

実際、僕は首長を務めた際に自分の考え方と違う人材も重要なポジションに登用しました。例えば、僕が大阪府知事のときに要職で起用した人物は、僕が政治生命をかけた大阪都構想(特別区制度)の反対派で、よく議論でぶつかりました。おそらく僕の立ち上げた維新の会のことも嫌いだったでしょう。それでも、副知事として大阪都構想の設計図をつくり、住民投票に持っていくところまで責任を全うしてくれた。僕が政治家を引退した後に彼も退職し、その後、大阪都構想に反対して2019年の大阪府知事選に出馬し、吉村洋文さん(現大阪府知事)と対決しています。

つまり、価値観や思想は違っていても、ジョブを共有していれば組織は動き仕事は進むのです。AIについての考え方も同じ。AIを拒否する人、場面によって使い分ける人、何でも頼る人。どんな人であろうとも与えられたジョブを期限内にこなしてくれれば、それぞれに考え方が違っていてもいい。むしろ自分がAIに否定的なら、積極的に使う人をそばに置いたほうがいいくらいです。

大切なのは、リーダーを目指すならAI頼りにならないことです。僕は昔から、毎日5大全国紙を読んで基礎的な知識を蓄え、それをベースに持論を構築してきました。揺るぎない持論を持てれば、AIを恐れたり、嫌悪したりすることなどありません。

自分に持論があれば、むしろ持論に沿ったプロンプトをAIに与えて、持論をさらに膨らませることもできる。

また過去の事実の整理を行うにはAIはもってこいです。AIを使う人をバカにせず、うまく味方につけたいところです。(橋下)

その人は持論を持っているか。あるなら文句なし!