業者を震えさせる一言「国交省に言うぞ」 不動産売買業界

特徴

動く金額が大きく、トラブルが発生したとき顧客が納得しにくい。注文住宅の欠陥などの契約不適合責任(かつての「瑕疵担保責任」)をはじめ、デリケートな法的判断を求められる要素が多い。

売買契約書などで契約条件が客観的に確定しやすく、法的な問題解決の手法を用いやすいが、一方で欠陥とはいえないレベルの軽微な問題や重要事項説明書に記載義務のない近隣環境などについてのクレームが、カスハラ化することもある。日照や土地境界、施工中の振動・騒音などで、周辺住民からクレームが入る例も多い。

最悪の場合、業者は業務停止や免許取り消しのリスクもあるため、「国土交通省に訴えてやる」と言われると強気に出にくい。

対応策

「まずは法的責任があるかどうかが対応のベースになります。契約当事者が一般消費者か事業者か、取引は売買か媒介か、物件は宅地か建物かなどによって、適用される法令や条文も変わってきます。弁護士に早めに相談し、法的責任の見立てを行い、その後の謝罪や示談の解決につなげていくことをおすすめします。

個人的に感じるのは、契約の際の説明不足に起因するクレームが多いということ。顧客との認識のズレが出ないよう、求められる説明義務をきちんと果たすとともに、面談メモやメール、確認書などの記録を残しておくことが大切です」(同)

下請けが矢面に立たされる 建設業界

特徴

発注した時点では完成品が存在しないため、顧客との間でイメージのズレが生じやすい。特に注文住宅など一般人が顧客のときは、業者と顧客の間の知識の差が大きく、図面や書類による説明が機能しにくい。結果、完成時に「約束した内容と違う!」という憤りが発生し、カスハラに発展する場合がある。

元請けから下請けへ作業の委託を行ったようなケースでは、顧客と契約しているのは元請け業者なのにもかかわらず、指示通りに作業している下請け業者がクレームの矢面に立たされるなど、理不尽な出来事も起きやすい。

対応策

「やはり最初の契約段階のすり合わせが非常に重要です。設計図や完成予想図などを駆使し、できる限り顧客とイメージを共有するよう努力しましょう。

現場で作業にあたる下請け会社と、元請けとの連携も大切。たとえば、顧客から下請けの作業担当者に『イメージと違うから直せ』といった要望が出されたとき、すぐに対応してはいけません。その内容を元請けに報告・相談した後、追加費用がかかる可能性など、顧客にきちんと説明するべきです。こうした手順を踏まずに顧客の求めるままに工事を仕上げてしまうと、後で追加費用の支払いを求めたときに『そんな話は聞いていない』というクレーム案件になりかねません」(同)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

(構成=川口昌人)
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