365日の営業が可能な「特区民泊」を狙っていく

盛り上がりを見せる民泊市場だが、特に大阪の過熱には「特区民泊」も関係している。

「民泊新法(住宅宿泊事業法)では1年間で最大180日しか営業が認められていませんが、国家戦略特別区域(特区)では、宿泊施設の不足を補うため年間365日の営業が認められており、大阪では大阪市、八尾市、寝屋川市が該当します。当然、民泊新法より特区民泊のほうが高い収益が期待できます。ただし、特区民泊では最低宿泊日数が2泊3日〜とする一方、民泊新法は1泊2日〜といった違いもあります」(伊藤氏)

図版作成=大橋昭一

首都圏では大田区のほか、千葉県千葉市も特区民泊に指定されている。「羽田空港に近い大田区の民泊が盛り上がりを見せる一方、千葉市は成田空港と都心を結ぶ動線上にないため客付けは弱い印象です」(R社長)

これから民泊を始めるのであれば、物件のエリアが民泊新法なのか、特区民泊なのかによって期待収益が大きく変わる点は覚えておきたい。では実際に民泊を始めるにあたり、どれくらいの初期投資が必要なのか。伊藤氏がシミュレーションを提示する。

「すべて自分でやれば初期費用200万円程度で開業も可能ですが、膨大な手間と時間が必要です。会社員が副業で始めるのであれば代行業者の手を借りるのが無難です。最大10名が泊まれる広さを想定し、物件探し、リフォーム、消防設備、許可申請を業者に依頼する場合、初期費用の目安は400万円程度。売り上げは開業エリアや、繁忙期か閑散期かによっても変動するのであくまで一例ですが、1泊1万〜3万円の宿泊費で、稼働率は平均すると7割程度です。1カ月の売り上げが50万円だとすれば、そこから家賃10万円、運営委託費10万円、清掃費用5万円、光熱費、通信費、消耗品といった経費を支払うと約20万円が手元に残るイメージです。自主管理より手残りは減りますが、運営を委託するからこそ、忙しい会社員や、東京在住の方でも大阪での民泊経営が可能となります」

図版作成=大橋昭一

民泊ならではの「外国人にウケる物件づくり」

民泊で売り上げを伸ばすためには、立地に加えて物件の差別化も重要となってくる。

「外国人にウケる物件づくりとして最近『葛飾北斎の浮世絵がプリントされた和柄の壁紙』を施工する機会が増えています。導入すると予約サイトに掲載する写真が非常に映えるので集客が向上するようです。予算に余りがあるのなら家具やカーテンに力を入れるよりも壁紙を刷新したほうが、コスパが高い。ちょっとしたインテリアは100円ショップで揃えることも可能ですが、全体的な雰囲気がチープになってしまうので、避けたほうがいいでしょう」(R社長)

地方の民泊は物件の自由度が高く、独自の強みをつくれるのが魅力だ。

「買い手が付かずに放置されていた元機織り工場をリノベーションし、30畳のリビングが特徴の民泊をオープンしたところ、一般住宅にはない非日常空間が人気を呼んでいます。私が運営している民泊ではほかにも庭でヤギを飼っている物件もあります」(羽田氏)