援軍から早々に「おもちゃ」にされている

これだけなら、そう珍しい話ではない。半世紀近く前には、河野太郎・デジタル大臣の父・河野洋平氏らの「新自由クラブ」が注目を集めたし、その後も、30年ほど前には、小池百合子・東京都知事も一員だった「日本新党」が台風の目になった。1995年には、東京都知事にタレントの青島幸男氏が、大阪府知事にはお笑い芸人の横山ノック氏が、それぞれ当選している。

時代は常に「新しい」政治家を求めてきたし、石丸氏もまた、その流れに連なっているだけだと考えれば、話は簡単である。

しかし、石丸氏の「新しさ」は、援軍であったはずのネット上から早々に「おもちゃ」にされているところにある。

槍玉にあがっているのは、主に、日本テレビ系列のネット番組での社会学者・古市憲寿氏とのやりとり、そして、フジテレビ系列「Mr.サンデー」での元乃木坂46の山崎怜奈氏とのやりとりの2つである。

とりわけ前者が、X上で「石丸構文」という大喜利の元になっている。その会話、というよりも、お互いにお互いの話を聞くつもりがない(ように見える)スレ違いについて、どちらが悪いとも良いとも述べるつもりはない。

社会学者の古市憲寿氏(写真=財務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

ネットの風雲児から、パワハラをする恫喝者へ

それよりも、石丸氏の会話が「ネットミーム」になっているところに注目したい。ネットで会話がいじられる対象だった小泉進次郎氏と比べると、石丸氏の特徴が際立つからである。

すでに、X上で「石丸構文」と「進次郎構文」を並べたネタは多い。ただ、後者がバカにされたり揶揄されたりする、微苦笑を誘うのに対して、前者には怒り、あるいは恐れを感じる人が多いのではないか。

進次郎氏のテレビでのやりとりもまた、かみ合っているとは言いがたい。とはいえ、石丸氏ほどのアクの強さはない。地方の首長経験をもとに既存の政治家に向かって「No」を突きつける姿勢では、元大阪府知事・橋下徹氏や、前の兵庫県明石市長・泉房穂氏と似ているものの、石丸氏は、マスメディアの「お約束」には収まらない。

古市氏や山崎氏といった、テレビのなかでは若者代表=良識派・改革派とみなされる2人に向かって、石丸氏がケンカを売っているように見えるからである。ネットユーザーにとって、その3人は、みんな味方だと思っていたのに、石丸氏だけがパワハラをする敵、というか、宇宙人というか、部外者に映ったのではないか。

石丸氏が「おもちゃ」にされる理由は、こうしたパワハラ的な言動だけではない。もっと根本的な原因があるのではないか。