問診では具体的に話したほうがいい

次に、患者さんから病状を聞き取る「問診」では、ほんのちょっとしたことがよい医療につながります。とても簡単なことなのですが、医師の質問に対して可能な限り具体的に答えていただくことです。

たとえば胸の痛みを主訴として受診したとしましょう。胸痛といっても原因となる疾患はいろいろありますから、問診によって鑑別疾患を絞り込まなければなりません。胸痛はいつから、どのような頻度で、どれくらいの持続時間なのかを尋ねられたら、できるだけ詳しく教えましょう。

つまり「最近になって、ときどき胸の痛みを感じます。痛みはちょっとの間だけ続きます」よりも、「3週間ほど前から1日に1回か2回、胸の痛みを感じます。痛みの持続時間は数秒から長くて1分間ほどです」と説明してくださると、より正確な診断につながりやすくなります。よく言われていることですが、受診前からの症状の経過、質問したいことなどメモしておいていただくと、伝え忘れや聞き忘れもなくなりますよ。

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問診なしの検査や薬の処方は不可能

ときに「問診はいいから検査をしてほしい」と言う患者さんもいます。胸痛の場合は「胸部CTを撮ってほしい」と指定されることも。しかし、胸部CT検査を行ったからといって、必ずしも胸痛の原因がわかるわけではありません。胸痛は「心筋梗塞」や「逆流性食道炎」によっても起こりますが、これらの病気はCTではわからず、それぞれ心電図検査や上部消化管内視鏡検査が必要です。つまり、問診によってどの検査が必要なのかの判断が変わります。

また同様に「問診はいいので薬をください」と言う患者さんもいます。でも、例えば風邪だった場合、薬は風邪そのものを治すのではなく、症状をやわらげる効果しかありません。つまり適切な薬を処方するには、いつごろからどのような症状(発熱、鼻水、のどの痛み、咳など)があるのか、具体的に教えていただく必要があります。患者さんがどのような症状に困っているかによって処方内容が違うのです。

それでも普通の風邪程度なら、処方が少々不適切でもそのうち自然に治ります。でも、もしかすると風邪ではなく肺炎などの重篤な病気かもしれません。まれに問診や診察を省いて患者さんの希望通りに薬を処方する医師もいますが、重篤な病気を見落とされるリスクがあることを知っておきましょう。