ヤバい条例なのに「成立しそう」としか報じない

2023年10月、埼玉県議会で審議された虐待禁止条例の改正案、別名「子どもの留守番禁止条例」に世論が沸騰しました。この改正案は、子どもだけで公園で遊ばせたり留守番させたりすることを「子どもを放置する虐待行為」とみなすトンデモ法案でした。

小学3年生以下は放置禁止、小学4〜6年生までの保護者は努力義務だという。定員オーバーで学童保育に入れない子どももいるのに、放課後に子どもだけで過ごさせることを虐待行為とみなすのは、保護者に仕事をするなというのに等しい。しかも、保護者不在の子どもがいることに気づいた市民は通報せよ、という。まさに監視社会です。

こんなロクでもない条例であるにもかかわらず、大手マスコミは揃いも揃って「委員会で自民党公明党の賛成により可決、本会議でも成立の見通し」と報じました。

たしかに、10月4日に自民党が条例の改正案を提出し、2日後の6日には県議会の福祉保健医療委員会でわずか2時間ほど意見を交わしたのちに自公の賛成多数であっさりと可決していました。それを受けて、大手マスコミは成立が既定路線だと思い込み、「問題のある法改正ではあるが、本会議にて成立の見通し」としか報じなかった。

怒りを力に変えれば状況は変えられる

でも私は、その報道を見て、諦めるのはまだ早いと直感しました。そこで、「こんなロクでもない条例を通したらあかん。諦めるな、まだ変えられる。埼玉県知事に意見を届けるんや」とSNSでメッセージを発信しまくりました。

私には、絶対にひっくり返せるという確信があった。こんな理不尽な条例はおかしいだろうと思うのが、世の中の子育て層の普通の感覚だからです。育児中の親たちは、こんな理不尽な条例が成立すると知って激怒していた。

「うちには小学校2年生の子どもがいるんだけど、私も働いてるし、放課後とか付き添えるわけないんだけど。そしたら通報されるわけ?」という声が山ほどある。その激怒を力に変えればいいだけです。私は、条例案をひっくり返すには二つのポイントがあるとSNSで呼びかけました。

つまり、与党の自公が埼玉県議会で過半数を取ってはいますが、自民党単独では3分の2に達してはいません。もしも大野元裕県知事が、「この改正案はちょっとおかしいのではないか。再検討してみては?」と再議をかけた場合、それでも改正案を通そうと思ったら議会の3分の2の賛成が必要になる。これが一つ目のポイントです。

そして二つ目のポイントは、公明党が自民党に賛同せずに棄権すること。そうすれば3分の2を超えないので、改正案は止めることが可能になる。私はSNSでこれらのことをすべて書きました。「知事が“再議”と言いさえすれば、そして公明党が“もうちょっと考えたい”と言いさえすれば止められるんや。諦めるのはまだ早い」と世論に呼びかけた。