脳を鍛えたいと思ったら、反論してみる

「本当に、この人は悪人なのか?」「いいこともしていたじゃないか」「もっと悪い人がほかにいるのかもしれない」などと冷静に考えることを習慣づけます。

このトレーニングを重ねれば、多様性を認められる柔軟な思考ができるようになって、一つの考えに固執する偏屈老人になるのを回避できます。

基本的に、前頭葉を使うためには「反論」を考えなければいけません。つまり難しい本を読むから賢くなるわけではなく、難しい本に「その考えは間違っているだろう」などと喧嘩を売るときに賢くなるわけです。

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別に難しい本でなくても、脳を鍛えたいと思ったら、反論してみるという方法があるのです。

この本だって、「いや、和田さん、そんなことを言うけど、簡単にはできないよ。世の中はそれほど甘くないんだから」と思いながら読んでみる。

そもそも私の言うことが絶対に正しいなどと私自身、考えていませんから、どんどん突っ込んでください。それだけでも、前頭葉は元気になりますよ。

睡眠中に脳の老廃物は排出される

脳の老化を遅らせる効果的な方法の一つが、「睡眠」です。

先にも言ったように、アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれる不要なタンパク質が溜まり、脳の神経細胞が死滅することで認知症が進んでいくと考えられています。睡眠不足になると、この老廃物が一定量上がることがわかっているのです。

人間は生きて活動している限り、体内に老廃物が生成されます。脳以外の体の老廃物はリンパ管を通って血液に流れ込み、最終的には尿として体外へ排出されますが、脳にも老廃物を排出するシステムがあり、睡眠中に働くことが明らかにされています。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が行った調査によると、睡眠時間が6時間以下のグループがアミロイドβの沈着がもっとも多く、睡眠時間が7時間以上のグループがもっとも沈着が少なかったという結果が出ています。

ただ、睡眠時間が長ければいいというわけでもないようです。

睡眠時間が9時間を超える場合は認知機能に異常をきたすという研究もあるので、一日に7〜8時間が、認知症を遅らせるためには望ましい睡眠時間と言えるかもしれません。

とはいえ、7〜8時間も連続して眠れないという高齢者も多いでしょう。年を取るにつれて寝つきが悪くなったり睡眠の質が悪くなったりするため、不眠の悩みを訴える患者さんが少なくありません。